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国会質疑
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2012年3月22日
予算委員会公聴会

■予算委員会公聴会に関する動画


○金子洋一君 民主党の金子洋一でございます。
 本日は、土居先生、藤井先生、大嶋先生、大変お忙しい中をお越しをいただきまして、本当にありがとうございます。
 まず、早速お尋ねに入らせていただきます。
 私、大嶋先生のお話については正直申し上げまして守備範囲外でございますので、土居先生、藤井先生に主にお尋ねをさせていただきたいと思います。もちろ ん、土居先生、藤井先生、大嶋先生おっしゃること、大変に共感する点多々ございますけれども、例えば所得再配分の問題ですね、土居先生のお考えになっている、あるいは藤井先生のデフレへの取組といった点で大変共感をいたしますが、あえてお尋ねをしたいこと、意見の違うことをお尋ねをさせていただきたいと思 います。
 まず、土居先生にお尋ねをしたいと思います。
 先生のこの配付をしていただいた大変詳細にわたる資料の中で、まず六ページ、欧州諸国の国債金利の上昇ということでデータをいただいております。簡単に 御質問を申し上げますと、これだけ欧州の金利が上がっている中で、なぜ日本の国債にコンテージョンが起きないのかという点でございます。
 先生は、日本国債の国内での消化余力というところで、七ページですが、一般の政府債務と家計資産ということでお示しになっておられます。これですと、家計の資産が徐々に余力がなくなっていくと、消化がしにくくなっているというふうに読めるわけでございますけれども、私は、日銀の資金循環統計などを見てい ますと、むしろ一般政府の貯蓄超過あるいは資金不足というのは企業の貯蓄超過、資金不足と密接に関連をしていると、単年度で見ますとほとんど逆の方向に、正反対に動いているという事実がございますので、企業からの資金が国債の方に回っているのではないかなと思っております。
 その点につきまして、まず土居先生にお尋ねをしたいと思います。

○公述人(土居丈朗君) 御質問どうもありがとうございます。
 私自身は、この図は家計の金融資産だけを絞っておりますけれども、当然金融市場には、いわゆる企業の資金余剰によってそれが運用される、その中で国債が 購入されるという、そういう部分もあるというふうに思っています。ただ、根底のといいましょうか、その本源的な貸し手となり得るものは誰なのかという、そ ういう観点からいたしますと、企業も他人から負債や株式によってお金を調達しているという立場にあって、やはり本源的なお金の出し手というのは究極的には 家計になるだろうということで、確かに、短期的には企業の資金余剰があって、それによって国債が消化されることで確かに金利が上昇することを防ぐというこ とはできているということがありますけれども、今後は高齢化によって我が国の金融資産は減る方向にあると。つまり、ライフステージの中で、若い人たちは貯 金を積み増し、高齢者は貯金を取り崩すというライフステージは、これは人間の宿命でありますけれども、その中で、高齢者の比率が増えていくということにな りますと、相対的には家計の金融資産は減少する方向に我が国はあると。
 そういうことを考えますと、企業の資金余剰に頼ってばかりいると、いつの間にやら本源的なお金の貸し手である家計の金融資産がどんどん減ってしまって、振り返ってみると、結局は国債も誰も国内では買ってくれなくなるかもしれない、追加的に買ってくれなくなるかもしれないと。その反面、海外からお金を借り るというウエートが多くなるということが起こるのではないかと。そういう見方を少し捨象して、簡素化してお示ししたのがこの七枚目のスライドというふうにお考えいただければと思います。


○金子洋一君 ありがとうございます。
 企業のその資金余剰の動きの方が単年度で見ますと明らかに一般政府の動きと関連をしておりますので、ベースになる部分で家計というのはあるのかなという気はいたしますけれども、その資金のお金の動きの方が重要であるのではないかなと私は思っております。
 そして、今先生のお話の中で、国外からの資金の流入のお話がございました。これ、先生のお話の中にあったんですけれども、海外との金利の裁定のお話です、国債の金利の裁定の話。これは冒頭の欧州の国債の金利とのコンテージョンがなぜ起きないのかということとほぼ裏表のお尋ねになるんですけれども、これ だけ長期間海外と金利が違っていると。つまり、海外との金利の裁定が行われていないというのは、これは、将来起きるぞと見るべきなのか、それとも、やはり日本の場合には何らかの要因があってそういった裁定が起きないというふうに見るべきなのか、先生はどうお考えでしょうか。

○公述人(土居丈朗君) 御質問ありがとうございます。
 今のところ、まさに欧州の財政危機に端を発した金融の混乱、これによってまさに先生御承知のように円高が起こったということがあります。この要因は、目 下の我が国の国債の増発要因よりも大きなマグニチュードで金融市場を席巻したというふうに私も思っておりますので、円高によって、その金利裁定の部分は、御承知のように、単純に金利の高い低いということだけではなくて、将来の為替レートの変動の期待というものも当然金利平価では起こってきますので、そこの どちらの動きの方が早い、ないしは大きなインパクトを持ち得るかということであります。ですから、為替レートで調整される方が大きいと金利差は残ったまま ということになって、我が国の金利は低いままということは、当然これは起こるということは私も承知しております。
 ただ、いつまでも、いつの場面も、どこでもこういうことが続くかというと、ひょっとすると金利の方がより感応的に動くという場面が将来起こるかもしれない、その点については私は若干懸念をしておるという、そういうことでございます。

○金子洋一君 ありがとうございます。
 今のお話の中の先生のおっしゃったことを私なりにかみ砕いて解釈をしますと、つまり、今後円高が続くような状況ですとこういった金利の差というのがあり続けるというふうに考えてよろしいんでしょうか。

○公述人(土居丈朗君) 御質問ありがとうございます。
 まさにおっしゃるとおりでございまして、要は、円という資金を持つときに、いわゆるキャピタルゲインと申しましょうか、円高によって資産価値が増加するということだから、別に円の資産として金利を高く要求しないということは起こり得ると思います。
 ただ、いつまでもこんな円高であっては困る、ないしは円安にもっと政策のかじを切れないかと、こういうお話もあったりいたしますので、円安の刹那になり ますと、当然円で持っている資産を取り崩そうとするとか、ないしは円で引き続き持つということであるならば、円の価値が目減りする分だけきちんと、インカムゲインといいましょうか、金利をもっと高く要求しないと持ち続けられないよというふうに海外から言われるという可能性が出てくるとは思います。

○金子洋一君 ありがとうございます。
 となりますと、円高期待が続く限りこういう状況が続いてしまうというのか、続くというのか、そういうようなことでよろしいのかと思います。
 また土居先生に続きましてお尋ねをさせていただきたいと思います。それは、金利の上昇の問題です。
 例えば、先生の資料の十ページで、これは財務省の資料ですけれども、名目経済成長率が上がれば金利も上昇というふうに書いていただいております。私は、ここにかなり疑問があります。と申しますのも、これは例えば日銀の白川総裁なども、最近は、金利の上昇にはいい金利の上昇と悪い金利の上昇がありますと おっしゃるようになりました。いい金利の上昇というのは景気回復に伴う上昇で、悪い金利の上昇は、まさにおっしゃるような、国債の信用不安から起こる金利 の上昇ですというふうにおっしゃっています。
 ただ、その点と離れましてでも、果たして名目経済成長率が上がって必ずしも金利が上がるのかどうかという点を私はお尋ねをしたいと思っておるんです。と いうのは、恐らく世の中で言われておりますリフレ政策というものがございまして、物価を何らかの金融政策で上げていくと。そうなりますと、リフレ政策に反 対をなさる方というのは、そういうことをしますと国債の金利も直ちに上がるというお答えの仕方をなさいます。言い方を変えると、フィッシャー効果が直ちに 効く、あるいはもっと言い方を変えると、長期的な均衡状態に常に経済があるという御主張だと思います。
 私は、それ、かなり疑わしいと思います。例えば、大恐慌の状態、アメリカの大恐慌の状態でも、あるいは日本の場合でも、一九三二年なり三三年を底に物価 は淡々と上がっていきました。ところが、長期の金利にしても短期の金利にしても、我が国も米国も三二年、三三年から恐らく四〇年ぐらいまで右肩下がりでし た。つまり、それ以降というのは戦争に入りますから。七、八年はずっと金利は下がりっ放しの状態になったわけです。また、そんな昔のことじゃ分からないよ という声もありますので、じゃ、直近の欧州なり米国の経済を見ておりますと、マイナスの実質の金利がもう三年以上続いております。
 ですから、ここで前提にされているような、経済成長率が上がれば金利も上昇、直ちに上昇という意味ですけれども、というこの試算というのはかなり疑わしいと思うんですが、先生はこの点についてどうお考えでしょうか。

○公述人(土居丈朗君) 御質問ありがとうございます。
 私自身は、これが必ず起こるということを申し上げたいというわけではありません。むしろ、財政収支をより底堅くきちんと見ておくには、一番悪いシナリオ と申しましょうか、良くないシナリオであったときにどういうことが起こるかということをきちんと見定めつつも、もしうまくいけば、それはボーナスとしてそ の原因を何らかの形で国民が享受すればいいというふうに思っておりますから、もちろん私自身も経済成長を促すということには大賛成でありますし、これはこれとして取り組むべきだと思っておりますけれども、もしそれがうまくいかなかったとしても、そこでひどい状況にならないように考えておく必要があると。
 そういう意味では、別にこれは、単に自然増収がこんな程度しか上がらないんだから経済成長してもしようがないということを言いたいわけでは決してありま せんで、むしろ経済成長をすればそれなりの自然増収が上がるような税制改革をきちんと施しておくと。これは増税するかしないかということは全く別問題とい たしまして、我が国の環境として税制改革をきちんと整えて、それによって経済成長とともに税収も多く入り、それによって財政もよりその収支が改善するような構造に変えていく、つくっていくということが必要なのではないかというふうに思っております。
   〔委員長退席、理事川上義博君着席〕

○金子洋一君 ありがとうございます。
 要するに、最悪の状況に対して備えておくのが為政者の務めだというふうにおっしゃっているんだなと受け止めさせていただきました。
 今申し上げましたけれども、大恐慌のときには実質金利が非常に低い状態が続きました。現在の我が国の経済状況を考えますと、やはり大恐慌に比較可能な非 常に厳しい状態にあると思います。先ほどちらっと申しましたけれども、物価を上昇させて実質金利を下げるという発想で様々な政策提言が行われておりまし て、私もそれに賛成をしておるんですけれども、反対をなさる方はフィッシャー効果を例に挙げられると。
 土居先生、そして藤井先生、お二方にお尋ねをしたいんですが、金利の今後の上昇の仕方ですね。つまり、何らかのショックがあって物価が上がった場合、そ れは金融政策を緩和したことが原因になるのかもしれません。そういった場合に、果たして大恐慌のときのように物価は上がるけれども金利の方は余り上がらな い状態が続くとお考えなのか、それとも、いや、そうではなくて、もう直ちに調整をされて名目の金利も上がってしまうんですというふうにお考えなのか、土居 先生、藤井先生にそれぞれお尋ねをしたいと思います。

○公述人(土居丈朗君) 金利に関連いたしまして、私自身は、もちろん金融政策のスタンス次第というところはあろうかと思いますけれども、特に大恐慌の例を挙げられました。
 大恐慌の話に関連して、私自身の認識を述べさせていただきますと、なぜ金利がそんなに急に上がらなかったのかというと、やはり企業の資金需要がアメリカ国内ではそれほど多くなかった。端的に言えば、アメリカが太平洋戦争に突入するまでは本格的な景気回復はなかったということだろうというふうに思いますか ら、そういう意味でいうと、民間の資金需要もそれほど多くないという中で金利がどしどし上がるということには必ずしもならないだろうと思います。
 そういう意味でいいますと、日本の経済、今これからどうなるかということでいいますと、これから民間の資金需要がどれだけ伸びるのか、さらには政府がど れだけ国債を増発するのかということによって資金需給が当然そこで規定されてまいりますから、もし需要側の方が多くなってまいりますと、当然、金利上昇圧力が掛かってくると。それは、ひょっとすると、私が一番懸念しているのは、国債を過度に増発してしまうと金利上昇の引き金を引いてしまうことになるかもしれないということを懸念しております。

○公述人(藤井聡君) 今後の金利の動向でございますが、基本的には日本銀行の金融政策がどういうスタンスになるか、依存しているという、土居先生と全く同じところでございますが。
 今後の動向でありますけれども、金利が上がるか下がるかということは、結局はデフレを脱却できるかどうか、すなわち民間の方々、まあ海外の方も含めてで ありますけれども、基本的に日本の場合は、国内の民間の方々が投資を積極的にしようと、すなわち将来に対して明るい展望を、期待が上向いて将来に対して明るい展望を持てば、それは金利が上がってくるという可能性が出てまいると思います。一方で、このままデフレが放置され続ければ金利が上がるということはか なり考えにくいだろうというふうに思われます。
 そして、したがって、これは金融政策だけではなくて実は財政政策とも関係がありまして、今、土居先生がおっしゃったように、国債の発行による懸念という ところの部分が当然あるということは私は否定はしませんが、国債を借りたので政府は何もしないということは絶対にあり得ませんので、借りたことで何かをす るわけでありますから、そのときに何をするかというと、当然ながらデフレ対策を徹底的にやるというような、金融政策と財政政策をドッキングするような、 パッケージでやるようなことになれば、そうすると初めて金利が、デフレ期待がなくなってインフレ期待になって金利が上がっていくというようなことになるか もしれません。
 したがって、金利がどうなるかということについてのお答えは、これはもう自然現象ではありませんのでお答えはできませんとしか言いようがありません。す なわち、政府がどういう態度を取るのかという、その一点に掛かっているということであります。そして、重要なのは、仮に実際の海外のヘッジファンドの投売りというのがなくはないとは思いますけれども、実はその割合というのは当然ながら今低いわけですね、海外の方が持っておられる。とはいえ、それが起こった としても、そのときに日本銀行が毅然と全て買い支えますと、一言毅然と言えば金利が上がるということはちょっと考えにくいと思います。したがって、政府と日銀のアコードの取組というその積極的なデフレ脱却政策とともに、日銀が、僕がきちんと金利の上昇を抑えますということを宣言するだけで、実際にそれを宣 言するだけで実際に買いオペレーションを掛ける必要がなくなってしまうというようなことが起こるということもあると思います。
 したがって、金利がどうなるかというのは、これは太陽がどっちから昇るかとか隕石がどこから降ってくるかとかという話と違って、これはもう政府がどうするかという、その一点だけに掛かっていると言って過言ではないということだけは申し上げておきたいと思います。
 以上でございます。

○金子洋一君 ありがとうございました。
 両先生とも、国債の扱い方、そしてその吸い上げたお金の使い方に掛かっているという御返事をいただきましたので、大変私も安心をいたしました。
 これもまたお二人の先生にお尋ねをしたいんですけれども、財政再建ということになりますとIMFが達人ですが、IMFもやみくもに財政再建をすればいい のではないと。増税を先にやってから財政再建に入ると失敗する例が多いというようなことをたくさん例を挙げて言っております。むしろ、歳出削減から入った 方がいいんじゃないかということを度々言っておられるわけです。私もなるほどそうなのかなというふうに思っておるんですけれども、そういった観点から見ますと、最近の政府の中期財政フレームなどに対する御評価、土居先生、藤井先生、どんなものになっておられますでしょうか。


○公述人(土居丈朗君) 中期財政フレーム、まさに民主党政権になってから作られたということでありまして、一つは、評価できる点は、これは財政運営のス タンスという意味であって予算の中身というところには関係ない部分でありますが、いわゆる中期的な視野を持って財政運営を単年度の予算をつくっていくとい うことで、これはイギリスの仕組みに倣った面があるというふうに承知しております。そういう意味でいいますと、中長期的な視野を持って単年度の予算編成を するという仕組みを何とか埋め込もうという取組をなさっておられるという点は、私は高く評価しております。
 ただ、中身の問題ということになりますと、もう少し願わくばそれぞれの、せめて社会保障とそれ以外ということぐらいまで切り分けたところで歳出抑制をど ういうふうに図るかということを更に一歩踏み込んで予算編成をしていくような取組が今後なされるということであれば、もっともっとその価値が高まってくる のではないかと思います。
 やはり単年度単年度で毎年予算を切った張ったといって、今年は減らされたけど来年は取り返すぞとか、そういうような話ではなくて、三年間なら三年間見渡 したときにどのぐらいその社会保障の各費目の予算が必要となるか、それを工夫すればどうやったら節約できるのか、そういうようなところを見渡しながら単年 度の予算を編成していくという、そういうスタンスというものが、これは今後、日本の財政運営、予算編成過程の中では是非とも必要なことなんではないかと 思っています。
 最後に一つだけ申し上げさしていただきますと、やはり社会保障給付の効率化、重点化ということは更に必要でありまして、特に医療と介護の連携とかそうい うようなものを更に進めることによって、質を落とさずに予算を抑制しながら国民のためになるということは、まだまだいろいろ工夫ができる余地が残っている というふうに私は思っております。そういう意味では、社会保障給付の効率化、重点化ということは、特に支出が多いがゆえにインパクトも大きくて、そのメリットも大きいだろうというふうに考えております。

○公述人(藤井聡君) 御質問の御趣旨、全く私も同意でございます。
 今の政府の考え方は、基本的に、理論的には、ちょうどこの土居先生の資料の中にございますので、これを使いながらお話ししたいと思うんですが、二十七 ページに課税平準化政策という、このバローさんの一九七九年のペーパーの理論が書いてございます。この手の理論はいろんな前提があって、これこれこういう ときには使ってよろしいと、これこれこういうときには使えるかどうか分かりませんということが全部、薬と一緒というか処方箋が書いてあるんですね。これが 使えるのはデフレがないときに限られると、バローさんはそれは直接書いておられないですが、ペーパーの趣旨からすると、これ、デフレのないときということが前提です。
 なぜかというと、次のページの二十八ページ、これ要するに、今税金を取って何かをやっても、将来税金を取ってやっても、まあ将来の方が負担があるので大 変ですという話なんですが、今ここで議論しているのは、今、税金とかあるいは財政を出動して、財政を出動してデフレを脱却できれば将来の負担が低くなると いう効果が一切入っていないんですね。ですから、バローさんが悪いんじゃなくて、これを今、日本で使う方がおかしいという話でございます。
 これは別の言い方をすると、デフレを放置するというのはデフレという大きな超巨大な負債を後世に残しちゃうことなんです。デフレというツケを後世に残すことなんですね。それを分からないと。一般の方はデフレという認識が余りないでしょうし、一般の方はデフレというものがどれだけ恐ろしいかということにつ いて十分御理解されていない一方で、何か税金のツケとかいうと、ああ、何か飲みに行ってツケが回ってきたのかなとかという、分かりやすいというだけはあるんですけど、デフレというのは、これは専門家からするとどちらも同じ話でありますから。
 しかも、今明確に、財政をきちんと拡大してデフレ脱却を明確に行っておけば、デフレによる将来の毀損、これは、私は今日はペーパーを渡してないですけ ど、数千兆円程度の毀損をもう十五年前とかの財政出動の失敗によって我々はもたらされているというような試算もあるぐらいですから。これは期間費用ですか ら、何といいますか、ほんまはめっちゃようなっているんやけど、今はこんなんやからということで、今こういうことで、言い方悪いですけど、気付いていない んですけど、ほんまやったらここまで行ってたというここの部分があるんですね。それがデフレの恐ろしさで、なかなか一般の方は気付かないところではあるんですが。
 したがって、今、政府は今デフレであるということの問題を全く理解していないということについて私は大きな懸念を感じます。
 このデフレについて、ちょっともう少しお話ししてもよろしいですかね。よろしいですかねって聞いたらあかんのですかね。
 これのページで、私の資料の補足資料で三十二ページ、これマリナー・エクルズという、これはエコノミストなんですが、彼はルーズベルト大統領にニュー ディール政策を進言した方であります。後にFRBの議長になった。真のエコノミストの方だと私はいつも尊敬申し上げているんですが、彼はこういうことを 言っております、デフレとの戦いということについて。
 敵国との戦争から人命を守るために使われるのと同じ政府債務が、平時においては、失意と絶望から人命を守るためにも使われるのであると。すなわち、彼にとってデフレの戦いというのは敵国との戦いと同じだということをおっしゃっているんですね。戦争を戦うための政府の能力に制限がないのと同様に、恐慌と、 すなわちデフレ、大不況と戦う政府の能力にも制限などないのであるとおっしゃっているわけですね。両方とも人的資源と物質的資源、頭脳、そして勇気のみに 懸かっているというふうにおっしゃっておられます。
 今日の公述でも、もうとにかく勇気をお出しくださいと先生方にお願い申し上げましたし、彼が言っているのも、結局、勇気だけが必要だと。しかも、先ほど の御質問の金利というのも、政府がどうするんだということに懸かっているんだということを、何度も繰り返しますが、経済というものは政府の政策によって大 きく変わってくるものでございますので、その一点を絶対に忘れないで政府の政策の方針を考えていただきたいと思いますし、今の現政府の方針は何かもう自然 現象みたいに金利のこととかを扱っていらっしゃって、それはいかがなものかとしか私は思えないところでございます。
 以上でございます。

○金子洋一君 ありがとうございます。
 続きまして、土居先生に税収弾性値の問題でお尋ねをいたします。
 資料十一ページなんですが、税収弾性値四には致命的な欠陥があるというふうにおっしゃっています。私は、ちょっとここの議論がよく分かりません、正直申し上げまして。バブル直前数年間の税収弾性値は一・六ぐらいでした、平均をしますと。一九九八年以降の平均が、単純平均が四ぐらいで、内閣府の作りました 与謝野さん肝煎りのデータでも三・一幾つあります。標本数が少ないので単回帰は問題だと書いておられますけれども、たしかに標本数が少ないから回帰分析を するのは問題かもしれませんけれども、平均値自体取ることに何ら問題もなかろうと思います。
 また、先生の資料の中では、十二ページですけれども、一九九五年から二〇一〇年を丸で取っておられますけれども、一九九五年から一九九七年、八年ぐらいまでというのはまだ我が国経済もデフレに陥っていませんので、やや性質が違うのかなという気もいたします。
 その後、いただいている税収弾性値の大きさ(4)、十四ページですけれども、税収増加率と名目経済成長率だけでは結果を信用できないと書いておられま す。ここも私よく分かりません。正直に申し上げまして、名目経済成長率が大きくなればなるほど税収が増えるというのは、これは当然GDPの実数があるわけ ですから、そこに各部門のGDPがこのくらい伸びて、そこには、背景にはもうけというのがあると。そのもうけに対して課税をされる、納税をするという形に なりますので、まさに税収増加率と名目経済成長率というのはこの一対一対応で分析をして何ら問題がないのではないかと思います。むしろ、そのほかの、他に 影響を与える変数というようなものを入れる方が恣意的ではないかなと思いますので、こういったやや素朴な疑問かもしれませんけれども、この点についてコメントをいただければと思います。

○公述人(土居丈朗君) 御質問ありがとうございます。
 確かに単純平均という数字があるわけですけれども、私が思いますのは、追加的に名目成長率が一%増加したときに追加的にどれだけ税収が増えるのかという ところを見るには、やはり単純平均、いわゆる平均消費性向と限界消費性向という考え方と似たようなものなわけでありますけれども、限界的なところでどれぐ らい税収が増えるのかというところをやはりつかむべきではないかというふうに思っておりまして、その意味では、原点からの傾きということよりかは、むしろ回帰分析をしたところでの傾きと。
 それからもう一つは、他の変数を入れるということに関連して申しますと、例えば円安になって景気が良くなって、税収は増税せずとも増えた、もちろん名目 成長率も何がしか上がっているということはあるかもしれないと。そういたしますと、そのときには確かに、かなり高い税収弾性値が実績値としては定義上観察 されるということはあると。逆は逆で、円高になればそうなると。そこの他の変数、つまり経済環境をコントロールせずに数字だけ生で定義上の数字として取っ てくるということだと、やはりそこはいろいろな影響が除去できていないのではないかという、そういうような見方でありますから、そこは、回帰分析という手 法を使うならば、それは、ほかの変数を説明変数として入れることによってそこはコントロールできると。
 そうすると、残されたところで、測ったところで、特に限界的な、スライドで申しますと十五ページのような傾き、こういう形として測られるところが、まさ に追加的に、一%経済成長率が伸びたときに追加的にどれだけ税収増加率が増えるかというところを測り取ることができるのではないかと、そういうような考え方であります。

○金子洋一君 おっしゃること、よく分かります。ただ、やはり円安になれば名目成長率も多分上がるでしょうし、円高になれば下がるでしょうから、そういった意味では、円安、円高といった数字を入れてコントロールをして計測する意味というのは、少なくとも実務家的にはないだろうというふうに私は思っておりま す。
 では、最後に藤井先生に一問お尋ねをさせていただきます。
 モデルの件なんですけれども、例えばIMFのモデルを見ていますと、GDP比で一%財政赤字を削減をすると内需が同じく一%分縮小をする、ただし輸出が 増加をするというモデルなんですね。輸出が増加をするというのは自国通貨安になるということです。何で財政削減をして自国通貨安になるのかというと、可能 性としては、それだけクラウディングアウトが起きていて国内の金利が上がっているということを前提にしているモデルです。
 となりますと、我が国のモデルにこういったIMFのモデルあるいはIMFの影響を受けた現在の内閣府のモデルを当てはめることはおかしいんではないかというふうに思われるわけですけれども、先生はいかがお考えでしょうか。

○公述人(藤井聡君) 御質問ありがとうございます。
 まさに私も全く同感でございます。本日の虚事の三でしたでしょうか、クラウディングアウトなんて起こっちゃいないということが完全にデータで分かっているわけであります。起こっていないどころか、両者の動きは真逆になっているということでございます。
 要するに、資金需要が今全然国内になくて、お金がこれはもう銀行の中にも余っておりますし、しかも日本銀行の中にまで余ってしまっているというような状 況でございますから、クラウディングアウトの起きようがないと。しかし、IMFのモデルはこれはインフレ前提といいましょうか、そういう超過預金がないと いうことが前提のモデルで、クラウディングアウトが起こるということが前提になっておりますので。
 これも何度も申し上げますけれども、そのモデルですとかこんなのは全部架空の、そもそもモデルなんて虚事みたいなものですから、使うときには相当注意を して使わないといけないのに、ここに、偉い学者先生が言うたからといってばあっと使ってしもうたら、普通の人が聞いたら、何か、ああ、それでええんかなと思ってしまうというところが非常に悪質な行為になっているんじゃないかなと私いつも感じるんですけど。
 今回の、まさに御指摘になった今の日本のモデルを使って計算をしているというのは本当に重大な詐称の疑義があるんじゃないかと先ほど申し上げたとおりで ございますので、是非、先生方のお力できちんと政府にちゃんとしたモデルを使うように御進言いただくように、御調整いただくようにお願いしたいと思います。
 以上でございます。

○金子洋一君 どうもありがとうございました。
 終わります。

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