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国会質疑
国会質疑 詳細
2013年3月21日
財政金融委員会

○金子洋一君 おはようございます。民主党の金子洋一でございます。
 今日は、大臣、両副大臣、御出席をいただきまして、ありがとうございます。百分間という大変長い時間でございますけれども、どうかよろしくお願いいたします。
 また、おとといレクをさせていただきまして、そのときに問い番号を振っておりますので、なるべくその問い番号を申し上げて、二十問ぐらいございますので、こんがらがるといけないと思いますので、申し上げてからお尋ねをしようと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず消費税につきましてお尋ねをさせていただきまして、それから麻生財務大臣の経済に関するお考えの内容につきましてお尋ねをさせていただきたいと思います。
 まず、消費税につきましてでございますが、昨年の八月に消費税引上げ法案が三党合意の枠組みの下で可決、成立をいたしました。その中でも様々な取決めがございますが、まず消費税の引上げの判断についてでございます。
 これは先日の代表質問でも大臣にお尋ねをさせていただきました。その内容を踏まえてでございますが、つまり、実質GDPが増えているかどうか、増加傾向にあるかどうかということが通常景気がいい悪いという判断の基準になっております。つまり、ほかの言い方をしますと、生産が上向きになっているのかどうかということだろうと思います。
 ところが、現在はデフレの環境にございます。前年同月比で見ますと、コアコアCPIで見るとマイナスの〇・七とか九とか大変なデフレ状態にある。となりますと、政策判断も、通常の経済の状態でしたら生産が上向く、つまり実質GDPが上向くということで政策の判断をしていいかと思いますが、この状況になりますと、これは少々違うのではないかと思っております。
 特に、消費税という問題は転嫁の問題がございます。転嫁というのは、これはデフレの環境ですと非常にしにくい。つまり、デフレの環境にありますと、経済主体の企業や家計の支出が一定になる。一定になる中で、一方の財の価格が上がるとなれば、その財の価格が仮に上がったとしても、ほかの財に支出をされる金額が減るわけですから、お金が減るわけですから、そちらの方が下がってしまうということが起きかねないわけであります。恐らく、デフレの環境ではそういったことが非常に起きやすくなっているんだろうと思います。
 となりますと、転嫁という、特に中小企業を中心とした企業にとりましては大変大きな問題を考えますと、デフレ環境から抜け出した状況で消費税が上がるということでしたら転嫁は簡単なんだろうと思いますが、そうでない場合には大変難しくなろうと思います。
 となりますと、生産が上向きになっているかどうか、つまり実質GDPで見るのではなくて、何らかの物価指標で見るべきではないか。例えば、コアコアCPI、先ほど申し上げましたが、そういったものでもいいかもしれませんけれども、もっとカバレッジが広い、コアコアCPIですと食料品、お酒は除きますけど、とエネルギーを除いたものがコアコアCPIですが、カバレッジが狭くなります。それでしたら、GDPデフレーターのように、四半期指標ではあって、速報性には欠けますが、カバレッジが非常に広いものを使って御判断をいただければどうかというふうに思っておりますが、そういったGDPデフレーター、例えば一%を超えるというようなことを基準の大きな部分に取り入れるということをされてはいかがでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) 今、金子先生の御指摘はもう極めて正しいところでありまして、これは御存じのように、デフレーションというものをやった経験というのは、過去、少なくとも一九四五年、さきの大戦が終わってこの方、デフレーションによる不況をやった国家は世界中に一つもありません。
 その中にあって、日本だけが初めてデフレーションによる不況というのをやっておりますので、デフレ不況に対する対策というものの経験者は日本にはもちろんのこと世界中に一人もいない中で、かれこれ我々は、土地が下がってきたのからいえば一九九二年ぐらいからこの問題に対処してきたんだということになろうと。多分歴史家はそう言うんだと思いますが、そういう中にあって、今おっしゃいましたように、この消費税の転嫁の話につきましては、極めて状況としては厳しい。したがって、実質成長率というのだけではなかなか難しいのではないかという御指摘は、全く正しいんだと思っております。
 したがいまして、昨年の成立いたしました税制抜本改革法におきまして、いわゆる来年の四月から引き上げるにしても、いわゆる消費税を五%から八%に引き上げるということになりましたけれども、これは機械的に何が何でも引き上げるということではないと。少なくとも、本年秋の十月ぐらいに、附則第十八条、税制抜本改革法の附則第十八条に書かれておりますところでありますけれども、今言われましたように、実質経済成長率、ほか名目経済成長率も必要でしょうし、あの中には物価動向というのも書いてありますが、そのほかQE等々、コアコア、いろいろあろうこととは思いますが、それ全部書かずに、もろもろの経済指標という言葉が使ってあると存じます。
 そういった中で、とにかくそういったものを全部複合的に考えて、この秋までに、来年四月、上げるか否かどうかを考えるという書き方にしてあるのでありまして、いずれにしても、それまでの間、今回の安倍内閣で出しております三本の矢の特に三本目の、いわゆる経済成長というものをきちんとした形で実感をしていただけるような形にすることができないと、これは極めて厳しい状況になるんだと思って、私どもはその点を踏まえて対応していきたいと考えております。
○金子洋一君 ありがとうございます。
 おっしゃることに反対をするつもりは毛頭ございませんが、もろもろの指標を複合的に、総合的に判断をなさるとおっしゃいました。
 それはそれでいいと思うんですが、ただ、やはり総合的に判断をするということになりますと、どうしても役所の都合が入ってしまう、恣意的になってしまう。やはり転嫁ということを考えますと、デフレの環境ではこれは大変難しいわけですから、GDPデフレーターのように物価を示す指標を特に重視をしていただきたい。単に実質GDPが上向きになったからといって、それでオーケーですよということがないようにしていただきたいんですが、その点、もう一度お願いします。
○国務大臣(麻生太郎君) おっしゃること、正しいと存じます。
 このGDPデフレーター、これは一番、一番なんて言うと問題があるかもしれませんが、極めて大事な指標として、実質成長率よりはGDPデフレーター、最も大事な指標の一つだと考えております。
○金子洋一君 ありがとうございます。大変、麻生大臣らしい論理的なお答え、ありがとうございました。
 続きまして、その転嫁の問題でございますけれども、やはり、先ほども申しましたが、中小業者、特に下請事業者、あるいは大企業との取引先の業者に対する不利益防止など、転嫁対策をきちんと取っていく必要があろうと思います。これ、一九九七年の引上げ時には、各省庁が適切な転嫁のための広報、相談とか、あるいは、これは公正取引委員会の事業になりますけど、優越的地位の濫用防止といった取組をやってこられました。財務大臣としてこの消費増税の転嫁の問題についてどのようにお考えか、お答えをお願いいたします。
○国務大臣(麻生太郎君) これはもう、転嫁をするのは、一番最初に、これは最初に三%が導入されたとき、外税か内税かという話はえらいもめました。正直なところであります。
 多くの当時の事業者の方が、内税は駄目だという御説が商工会議所、商工会等々が圧倒的に多かったのが、最初にできた、あれは山中貞則先生たちのときでしたのでもう大分前になりますが、そのときに随分騒ぎになったんですが、結果としてあのときは外税ということになったんですが。我々も当時チンピラ委員でそこに出ていて、外税なんかでやったら、ビールなんか外税でやったら誰が飲むんですかと。あれは内税だから飲んでいるんで、外税だったらあんなもの飲みやしませんよって言って反対だと言ったら、若造、黙れって言われて、あれ全部外税になっちゃったっていう記憶はあるんですけれども。
 あのときでも、本屋さんなんていうのは、百円だったものがいきなり百三円にしないで百五円にして内税で本屋さんは出されたんで、本屋に行っておまえ二円のお釣り出せと言ってしつこく迫ったんですけれども、そんなこと言うのは麻生さんだけですよって言われて、あのときは百五円で、週刊誌は全部百円が百五円になった。本屋の方が頭いいなとあのときすごく思った記憶があるんですけれども。
 そういう内税とか外税とかいうのは、あのときは随分騒ぎが、一回目のことで、初めてのことでもありましたのでいろいろお騒がせをしたことだったんですけれども、いずれにしても、こういったような方式をするときには、平成十六年の四月からこれは全部内税にせないかぬというような形のものにさせていただいたんですけれども、これは消費者からの視点というものと、これは売る方の事業者からの視点というのと両方考えないかぬところなんだと、私どもは基本的にそう思っております。
 与党においていろいろ御議論がなされておりますんですが、そういった中にあって、事業者からしてみると、八%にしてまたしばらくしたら一〇%にするということになるんであると、いわゆる値札の張り替えやら何やら、これは多分百円ショップとか、何でしょうね、ビックカメラとかいろいろ大量に売っておられる、ドン・キホーテなんか最たるものなんでしょうけれども、こんなところで値札一個、全部全部張り替えるといったら物すごい手間になりますんで、そういったなどの事務負担への配慮など等を考えて、とにかく税込み価格であるということをきちんと誤認されないようにちゃんと処置をした上で、消費税率の引上げの前後に限ってだけはもう外税でもいいとか内税でもいいとか、両方考えてやらねばならぬとか、いろんなことを考えてはおります、目に見える形としては。
 ただし、同時に、我々としては転嫁対策の特別措置法案というのを近々これは政府として出さねばならぬと思っておって、これは主に公正取引委員会等々とかが考えていられるんですが、いわゆる政府の共通の相談窓口というものをきちんと設置して、その上で転嫁拒否に対する、例えばこの分だけ値引いて出せとかいう、上から小売店に対して、仲卸からとか、メーカーから卸に対してとか、そういったようなところに対する各省庁、各都道府県等々に、ここらのところのどういうようなものが圧力が掛かって、その税金の分を全部業者がかぶらないかぬというような圧力にならないようにするということを我々この前のときもやらせていただいたんですが、今回はこれはデフレーションという状態でもありますので、これはかなり大掛かりにやらねばならぬという決意を持って、目下具体的にいろいろどういったことができるかというのを取り進め、そのためにはやっぱり法律の裏付けがないと、とにかく指導だけでとてもできるものではないのではないかとそのように考えて法律を出させていただかねばならぬと考えておるという次第であります。
○金子洋一君 ありがとうございます。
 これは問い六でお尋ねをさせていただいておるんですけれども、やはり価格転嫁を進めるという意味では外税方式が望ましいんだろうと思います。この点は大臣のまさに問題意識と重なってくると思います。
 そして、この消費税法の改正法には、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から、独占禁止法及び下請法の特例に係る必要な法制上の措置を講ずることと書いてありますので、まさに大臣の今言われたような法案が必要になってくるんだろうと思いますが、やはり消費税導入時に行われていたような表示カルテルですとか、あるいは転嫁カルテルといったような形のものを実施すべきではないかと思うんですが、この点、ひょっとすると所管外かもしれませんが、大臣のお考えをお尋ねできればと思います。
○国務大臣(麻生太郎君) これは公正取引委員会の方から一斉にカルテルではないかと言われると、これはなかなか反論としては難しいし、加えて煩雑な話になりますし、自分たちとしてはまともなことをやっていてもそれがというと、その協定を破ったような人の方がむしろ何か評価されてみたりするというのは、これは甚だ、ちょっと世の中としては受け入れ難いところでもあろうと思いますので、この点につきましては、今回出される法律の中において、公正取引委員会の今回のこれに関しては対象外、カルテル等々とは認めないとかカルテルとはしないとかいうような形の対応が必要なんだと、私どもの意見としては過日申し上げたところでもございまして、おっしゃるとおり、御懸念に対して対応していかねばならぬと思っております。
○金子洋一君 どうもありがとうございます。
 続きまして、順番が前後して恐縮ですが、問い二ということでお尋ねをさせていただきます。
 法律によっては転嫁ができない部門もございます。例えば、消費税非課税の医療での損税の問題、あるいはもう一つ、日本郵政の中の、昔でいうと会社間、会社内ですけど、その会社間の取引などが挙げられると思います。
 まず、その医療についてお尋ねをいたします。
 まず、これは非課税取引になっているというのは、中間投入物であるから非課税になっているものとか、あるいはもう一つ、社会政策的な配慮で非課税になっているものがあります。特に、社会政策的な配慮で非課税になっているものは学校授業料や助産料、埋葬料、あと、海外で申しますと書籍代とか子供の洋服代といったものがイギリスなどでは非課税になっております。ただ、これらは全て自由価格ですね。それぞれの企業が自由に価格を決められる、需要と供給で価格が決定をされるという形にマーケットでなっております。
 ところが、この医療における社会保険診療報酬は、これは公定価格です。二年に一回しか変わってまいりません。例えば、過去の消費税の引上げ時、平成元年には診療報酬全体で〇・七六%、平成九年には〇・七七%、こういった損税対策で診療報酬が引き上がっておりますけれども、やはりこの診療報酬の引上げ分が足りないということで約半分程度の損税が生じているのではないかというふうに様々な調査研究の結果言われております。
 この対策を今回、五%から最終的に一〇%になる時点でやっていく必要があるんではないかと私は思っております。例えば、現在は控除対象外となっている部分について検証を十分に行って、仕入れ税額控除が可能な制度にしていくというような対策を考えるべきではないかというふうに思っておりますが、こういったことについて大臣の御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(麻生太郎君) この社会保障関係というか社会保険診療に特に限定しておられるんだと思いますが、これは可能な限りいわゆる国民の負担を抑えながらサービスということを、何というか、提供せねばならぬという政策的な配慮から、基本的には消費税というものは非課税とされております。これは大体、外国でもほぼ同じような政策が取られているんだと思いますが、医療機関が医薬品とか、また医療診療にかかわります機器を購入するに当たりましては、その分については、消費税が掛かっている分については、それを診療報酬で見ておるという形でこれまでは推移してきたんだと思います。
 このような診療報酬で対応してきているというのに対して、昔と違って今は診療報酬は〇・七とか〇・六とか、もうほとんど一%以下やないかと、そんなものに対して、これ、最近のMRIとかでかい機械を買った場合はとてもじゃないけどそんなものでは賄えぬという御意見は、これは前から指摘のあるところでありまして、私も病院経営していましたんで、よくそこのところは私どももそう思っております、これは、正直なところ。
 しかし、昨年の六月の三党合意が民主党、公明党、自民党の三党でなされたときにおいては、消費税率八%の引上げ時までに医療保険制度において適切な手当てを行う具体的な手法について検討し結論を得るものとするということにされておりますのは御存じのとおりで、この医療に係ります課税につきましては引き続き検討を行うということになりました。
 そして、今年に入りまして、今年の二月の三党合意におきましても引き続き協議を行うとされたところでありまして、これに基づきまして三党及び、また与党間で今度のこのことにつきましては、税制抜本改革法の規定に沿ってこれは検討していこうというところになっているというのが私どもの承知しているところであります。
○金子洋一君 ありがとうございます。
 さすが機器の購入あるいはMRIのように大変大きな設備投資が必要だということ、もうきちんと御存じになっておられるということでありまして、まさにいろんな損税を出している医療機関をデータとしてプロットをしますと、ぴょんと飛び出すところがあります。ぴょんと飛び出す、上方に飛び出すところというのは、これは大きな設備投資をした医療機関であるということがほとんどで、その設備投資分を除くと、つまり通常の医療行為を重ねたような状態では、特に各医療機関共にほぼ同じような状況になるということであります。
 つまり、設備投資の部分は耐久財ですので、非常にそこの部分は、診療報酬で見てやるということになりますと、この年にどんと買うと、しかし、そのどんと買った設備投資のものがあと十年なり二十年なり使えるということになりますので、毎年の診療報酬で見てやるというのはなかなか難しいのではないか。逆に、診療報酬で見たとしますと、大きな設備投資を妨げる方向になるんではないかなと思います。
 そこで、また最初の話に戻ってしまって恐縮なんですけれども、やはりこういうふうに設備投資の在り方というのは各医療機関で違いますので、診療報酬で見るのではなくて、先ほど申しましたような仕入れ税額控除で認めていくべきではないかなと思うんですが、その点についてもうちょっと御意見いただければと思います。
○国務大臣(麻生太郎君) これは金子先生、なかなか昔から言われているところであると同時に、これは意見のまた分かれるところでもありますんで、全くおっしゃるとおりなんであって、医療機器というのは極めて最近IT化、ICT化されて、かなり昔のレントゲンの機械とは訳が違って、物すごく高価なものになってきております。MRIを申し上げましたけれども、CTスキャンだ、いろんな高価な医療機器というのがいっぱい登場してきておりますんで、それはちょっとまた別にすればいいじゃないかという御意見もあったりして、これちょっと、私どもとして今この方向でというのを決めているわけではございませんけれども、そういったものを踏まえて対応していかねばならぬなというお話が三党間でいろいろされているというところまで私ども承知しているところであります。
○金子洋一君 是非そういった方針で、税をつかさどる財務大臣が行動をしていただけるということを期待させていただきたいと思います。
 続きまして、郵政にかかわる内部取引の問題ですが、郵政民営化法で日本郵政グループが公社を分割した形で成立をしたということになります。そして、ゆうちょ銀行とかんぽ生命から大体年間一兆円程度の委託手数料を日本郵便株式会社に払っているということであります。となりますと、これが消費税が一〇%になりますと年間一千億円、消費税相当分を払うということになります。
 ところが、これが普通の企業ですと、一千億円も払うんだったら、いっそのこと合併をして、そして内部化してしまおうと。内部化すれば消費税は掛からないということになります。実際にそういった動きをなさるような業界もあると聞いておりますが、ところが、そういった合併をして内部化をするということは、郵政の場合は法律で禁じられております。
 前回の消費税引上げのときにも封書やはがきの料金というのは、これはそのまま据え置いたということになっております。このままそういった消費税の負担が大きくなるということになりますと、まさにユニバーサルサービスの提供も不可能になってくる可能性が大きく出てくるというふうに思いますので、ゆうちょ銀行とかんぽ生命が日本郵便株式会社へ窓口業務委託する際に支払う手数料については非課税にするとか、そういった取扱いをすべきではないかと、有利な取扱いをすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) これはもう金子先生よく御存じのように、消費税という税金そのものの考え方、哲学がいわゆる広く薄くというか、広く公平にやるというのが大前提でありますので、産業政策的な観点から特定の業界とか特定の企業の税負担というものを考えるべきではないということに、そういうのにすべきではないという形で設定をされておりますのは御存じのとおりです。したがいまして、郵政グループ内におきます取引に関してはこれだけちょっと特別にしろというのはなかなか困難なんだと思っております。
 今お話ありました郵政民営化に伴います郵便貯金銀行、郵便保険会社、日本郵便株式会社等に係る税制上の措置につきましては、引き続き所要の検討を行うというのにされておりますのは、与党の税制改正大綱におきましてもそういうことになっているんだということは存じております。
 ただ、これは、何というか、郵政に限らず、例えばNTTとか、それから日本高速道路株式会社とか、また、JRもそうだと思いますが、こういったところでも同じような、分割されておりますので、本当だったら合併した方が安く済むというのは全くおっしゃるとおりなんですが、分割を法律でされております関係上、こういったところでも、例えば高速道路会社でも大体年間その分だけ、七百億円とか、いろんな多額の消費税を納めておられるという前提でされておりますので、この問題に関しては、日本郵政だけ別というのはちょっとなかなか法律的には難しいというように考えております。
○金子洋一君 ありがとうございます。
 消費税が広く公平に課税をするものであると、したがって、産業政策的なものにはなじまないんだとおっしゃるその理念については大変よく分かります。
 ただ、この郵政の場合は、そういったゆうちょ銀行、かんぽ生命が窓口委託をするということが法令で決められているという点で、旧逓信省中にある事業でいいますと、先ほど言及なさいましたNTTとはこれは大きく違うわけですね。しかも、そういった形で業務委託をしなきゃいけないということで、業務委託を仮にしなかった場合には地方での金融窓口というのはなくなってしまうわけです、地方、もう大変な田舎ですね。そうなりますと、ユニバーサルサービスの提供という観点からこれは完全に誤ったことになってしまうと思います。
 ということを考えますと、NTTさんを例に挙げると申し訳ないんですけれども、やはりそういった企業とは、法令で義務付けられている以上、ここは大きく違うんではないかなと思いますので、その点を是非踏まえて御検討をいただきたいと思います。
 続きまして、次の質問に移らせていただきます。四問目でございますけれども、以前の自民党さんの政権のときに特別会計の廃止をなさいました。大変いい判断だと思います。済みません、番号入っていませんか。失礼します。タックス・オン・タックス、消費税の二重課税につきましてお尋ねをさせていただきます。
 特別会計の廃止というのは大変いいことだったと思います。こういったことを英断を下されたということについて深く敬意を表するところでありますが、これが、道路特定財源が平成二十一年の税制改正でなくなったということになりますと、これは、ガソリン税や軽油引取税というのは一般財源化したという解釈でよろしいんだと思います。ところが、そのガソリン税とか軽油引取税というのは、道路を造る財源として受益者負担の原則に基づいて自動車ユーザーが負担をしてきたというものだというふうに思いますが、このユーザーが負担をするという原則で課せられているんですけれども、一般財源化をされたということによってその根拠は失われたのではないかと思います。
 そこで、私は、ガソリン税や軽油引取税の当分の間税率、昔でいう暫定税率の部分につきましては、これは速やかに廃止すべきだというふうに思いますし、また、ガソリン税と消費税のタックス・オン・タックスの問題についても速やかに廃止すべきだと思いますが、大臣、いかがでございましょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) これはもうよく御存じのように、付加価値税の課税標準というものにつきましては、これは、いわゆる欧州等々におきましても他の租税も含まれていることにされております。したがって、揮発油税等々の個別の間接税を含みます価格に対しては消費税が課せられるというのは、ある程度国際的なルールとして確立されているものだと思っております。
 揮発油税につきましては、税制抜本改正の規定というものに従いまして、国際的なルールを踏まえて、簡単に言えば、国及び地方の財政状況を考えないかぬとか、それから、課税となる対象品目をめぐって、環境の変化、いわゆる地球温暖化等々の環境の変化、また国民生活への影響を考えて引き続き検討していかねばならぬとされておりますが、揮発油税等のいわゆる今言われた暫定税率、当分の間税率とかいろいろな表現はありますけれども、については、これは民主党の政権下におきましても、これは地球温暖化対策の観点とか厳しい財政状況を踏まえてこの税率水準は維持されたというものだと承知をいたしております。
 そして、揮発油税の税率水準につきましては、これは現在も、地球温暖化対策の必要性とか難しい財政状況とかいうものを踏まえますと、税制抜本改革法第七条という例の規定に踏まえてこれは慎重に対処していかねばならぬところで、やっぱり急激な税収の落ち込みというのもかなり大きな、財政事情に大きな影響を与えるものだとは存じますけれども、いずれにいたしましても、この点に関しましては慎重に検討していかねばならぬところだと考えております。
○金子洋一君 ありがとうございます。
 ただ、これ、私が代表質問のときにも申し上げたんですが、円安が昨年の十一月から急激に進んでおります。私は、この円安というのは安倍内閣の非常に大きな功績だとは思っております。ただ、これ、政策として円安方向への誘導ということが結果的に生じました。これが生じるということは、もう実際に行う前から明らかであったと思います。つまり大胆な金融政策を取る、緩和をするということになって結果的に円安につながるんだということは、これ事前に読めていたはずなんですね。事前に読めていて、しかもレートが大体二割ぐらい下がるということになります。そうなりますと、当然、円建てで輸入をしていれば、価格が二割ぐらい上がってもおかしくないということになりますので、こういったガソリンや軽油価格が上がるということは、これ事前に予期をされていたはずだと思うんです。
 となりますと、今の安倍政権の、何ていうんでしょうね、大胆な金融緩和政策で非常に高い支持率になっている、これはプラスの面です。ただ一方で、それに伴うマイナスの面、これについてもきちんと責任を取っていただかなければならないのではないかと私は考えます。
 そういった意味で、この当分の間税率を外すべきじゃないかと。つまり、今のように、現時点でレギュラーが百五十円ですとか、あるいは場所によっては百六十円というところもあるんでしょう、一リットル、ガソリンの場合。これがもっと上がったらどうなるんですかということです。
 ですから、こういう形で当分の間税率をこのまま残しておくことについては、是非とも御検討をいただきたいというふうに思いますので、もしその点について一言お答えをいただければ有り難いのですが。
○国務大臣(麻生太郎君) 確かに円安になりまして、これほど二割近く、かつては七十六円、七十五円ぐらいまで、一番円高のとき七十五円ぐらいまで行っておりましたので、それに比べますと今日で九十五円何十銭ということですから、約二割近くということになりますと、これは輸入されておられますものによってそれを価格に転嫁しないとやれないという部分というのはかなりなところに出てきているということも、円安のメリットばっかりよく新聞に出ますけれども、円安のデメリットの点につきましては輸入物価が直接響く、特にエネルギー価格等々で電力を始めエネルギーを多量に消費しておられるところにおいてはもろに影響が出てくることはもう間違いない事実なんだと思いますので、そういった点も考えておかねばならぬというのは全くごもっともな御指摘だと思います。
○金子洋一君 ありがとうございました。
 続いて、次の質問をさせていただきます。
 逆進性の緩和策ということについてでありますけれども、今、自民党さん、公明党さんの中では軽減税率を大いに取り入れようじゃないかというような議論が行われていると思います。ところが、軽減税率を取り入れて複数税率ということになりますと、これは会計上も大変手間も掛かってまいりますし、またどの品目を軽減税率にするのかしないのかという、そういった大きな問題も出てまいります。
 これは、大蔵省OBの政治家の方がよくおっしゃる話なんですが、たんす、昔の物品税の時代ですが、たんすについては、通常の素材で作られているたんすについては物品税が高かったと。ところが、特定の木材で作られたたんすについては、これは非課税だったという例があるそうだそうです。その特定の木材で作られたたんすというのがなぜ非課税になるのかということになりますと、それが我が国の伝統工芸だからという理由で非課税になっていたということなんです。
 ところが、私が推量いたしますに、その特定の木材のたんすというのは、多分そういった税制に力を持っておられる国会議員が非常に親しくされているとかあるいは選挙区内にあるとか、そういったようなことでゼロ税率になっていたのではないかなと思いますが、こういったことがどこでもかしこでも起きてしまう可能性があるわけですね。具体的に、フランスなどでも、キャビアは普通の税率だけれども、フォアグラは自国産が多いので安いと、軽減税率だというようなこともあると言われております。そういったことがありますので、軽減税率は余り望ましくないと。
 そして、給付付き税額控除という仕組みがございます。負の所得税の一変形ですけれども、これですと低所得者を中心にそういった補助をお渡しすることができる、そういったメリットがございます。軽減税率にいたしますと、給付付き税額控除と比較をしますと、例えば食料品を軽減税率にした場合、もちろん低所得者層も食料品をたくさん買いますけれども、高所得者層も食料品は結構買うと。エンゲル係数は高所得者層の方が低いけれども、実額で見ると高所得者層の方が食料品を買う額というのは大きくなる。その結果として、食料品に軽減税率を当てはめると、高所得者層の方が多く消費税分戻ってきてしまうというようなことがございます。私も昔、十分位別でちょっと簡単に計算をしてみましたら、やはりそういった軽減税率を食料品に入れますとジニ係数が上がってしまう。つまり、貧富の差が拡大する方向になってしまうということが我が国のデータでも認められました。
 ということですので、逆進性の緩和策としては給付付き税額控除を取るべきであって、軽減税率は導入すべきではないというふうに私は思うんですが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
○国務大臣(麻生太郎君) これは、金子先生おっしゃるように、この低所得者層対策としてはこれが、消費税率が八に上がったとき、一〇に上がったとき、もっとそれ以上に上がったとき、いろいろな御説がありますけれども、いずれにいたしましても、税制抜本改革法のときに当たって、今言われた御指摘はいろいろ検討をされております。
 ただ、今言われましたように、給付付き税額控除の場合、これは誰が低所得者層なのかというのを確実にするために、これはいわゆる昔でいう国民総背番号、最近ではマイナンバーと言うんだそうですけれども、我々のときはグリーンカードとか、これは時代によって呼び方がいろいろ違いますので、やろうとしていることは同じなんですが、名前が変わって今マイナンバー制度という言葉が所得把握のために必要なんだということで使われ始めておりますけれども、この給付付き税額控除の場合は、そのマイナンバーというのをきちんとしていただかぬとどうにもならぬなと思いますのと。
 それから、軽減税率、複数税率とかいろいろな言い方ありますけれども、これも、言われましたように、対象品目というのが、これは私、ちょうどイギリスにおりましたときに、これ上がったときに、サッチャーの時代だったんですが、キャビアは確かにおっしゃるように高い方なんですけれども、イクラは安い方なんですよね。一挙にあれのおかげでイクラがえらくはやり始めたのは良かったんだと、我々から見ればそう思った記憶があるんですけれども。学生時代のときでも、結果的にジンは安い酒で何とかとか、日本でも焼酎は安くして特級酒は何とかとかいろいろなことやりましたけれども、結果的には、イギリスの場合はもう公平性を欠くということで、一律ゼロといって全部あれ一律ゼロに、もう口に入るものはみんな同じという最も分かりやすいやり方にしたんだと思っておりますけれども、この複数税率、軽減税率というのは、これなかなかそこのところの線引きが難しいなというのは、そのとき見ていてそういう実感があるんですけれども。
 いずれにしても、これによって財源がある程度減ってくることも覚悟せねばいけませんし、その中で、途中においてはいわゆるインボイスと言われるものが必要になってまいったりしますので、これ、どこかの段階で簡素な給付措置を実施することとされておりますので、そういった意味からいきますと、今年の二月の三党合意におきましても、給付付き税額控除及び複数税率の導入を含む低所得者対策について引き続き検討を行うということにされておりますので、お尋ねの、今、給付付き税額控除については、民主党を含めまして三党で今議論がされているんだと思いますけれども、こういった問題につきましては考えねばならぬ大事なところだと思いますので。ただ、それに伴いますいろいろな手続等々も踏まえてやりませんと、ただ一方的にやりましても、なかなか、ためを思ってやっても、結果として中小企業のところはえらい手間が掛かって大変だということになりかねぬと、いろんなものもあろうかと思いますので、検討していかねばならぬと思っております。
○金子洋一君 ありがとうございます。
 これ、食料品に軽減税率を掛けますと、恐らく消費支出の三割程度が軽減税率の対象になってしまうわけですね。そうなりますと、一〇%への消費税引上げでは足りなくて、更に引き上げなきゃならないというようなことすら考えられるわけでありまして、是非ともそういったことのないように御配慮をいただきたいと思います。
 続きまして、次の問いに移らせていただきます。
 増税、消費税引上げに伴いまして、新規の、これは事業者を中心に考えた場合ですけれども、新規の設備投資をすると。会計ソフトを購入したり、あるいはレジスターを新しくするとか、そういったシステムを更新するというようなことをしなければならないと思いますし、またそういったシステム変更に伴って新たな作業をしなければいけない、それに伴って労働力の確保が必要になってくるといったようなことが出てくると思います。しかも、それがほぼ同時期に日本全国で起きますので、非常に手数料が高騰してしまうということが考えられると思います。
 これ二〇〇四年の四月に総額表示方式になりましたときに何が起きましたかと申しますと、三年間の経過措置だったんですけれども、IT投資促進税制や消費税額の一円未満の端数の切捨てが事業者負担の軽減策として行われたということであります。今回もそういった、特に中小事業者に対する悪影響回避のために税制上の優遇措置を行うといったことを御検討はなさっているんでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) 御指摘のように、中小企業者に対する、零細業者に対する施策というのは、これは平成元年の消費税の創設のとき、もう大分前になりますけれども、創設のときや、平成十五年度の改正、三から五に上がるときの改正時において、免税点制度とか、点数を決めたり、簡易税制の制度の見直しとか、みなし課税とかいろいろありましたけれども、総額表示義務の導入とか、いろいろな税制改正上や予算上の手続というのをさせていただいたのはもう御存じのとおりです。
 したがって、今回の消費税の引上げに当たっても、平成二十五年度の税制改正に当たりましては、緊急経済対策の一環として、中小企業、なかんずくサービス事業者がいわゆる店舗改修などの設備投資を行った場合に優遇税制を創設することとしておりまして、今言われましたように、冷蔵のショーケースとか陳列棚とかいろいろございましょうけれども、そういったものとか照明器具とか、そういったものに対する税制を優遇すること。
 また、二十四年度の補正予算におきましても、中小企業者の体質強化を図ってもらうために、新商品の開発とか販路の開拓支援とかいろいろあろうかと思いますので、商店街で人を集客することになろうと思いますので、そういったところに対する基金を二百億円つくらせていただいたり、また、いわゆる販路の開拓のために更にと、いろんなことをさせていただきました。
 また、平成二十五年度の予算におきましても、転嫁できない、上からの圧力とかいろいろあって、その分だけまけろとかいろいろ、等々の圧力等々掛かって転嫁できないということもあろうと思いますので、そういったことのために、公取とか地方の県、市、町等々から、時限的であっても、人員の拡大とか監視・検査体制、そういったものの強化というものを、先ほど法律プラスそれを実効せしめるだけの人的、マンパワーが要りますので、そのマンパワーの部分に関しましては人を時限的に出してもらうというようなことを考えて、それに対して予算を付けさせていただいたり、いろいろ図ることにさせていただいております。
 いずれにいたしましても、これ、税制改正に伴いまして、いろいろ、善意な第三者がきちんと言われたとおり上げようとするのを妨害する、そういったところの部分を排除することをしてやらないと、一斉に上げてまた、いわゆるカルテルだ何だ言われるようなことのないように、そういったことも考えて、こういったものに対する対応はきちんとしていかねばならぬ大事な点だと思っております。
○金子洋一君 ありがとうございます。
 細かいことを申し上げるといろいろ出てまいりますけれども、方向性としては正しい方向でお考えになっていると思いますので、是非ともよろしくお願いをしたいと思います。
 続きまして、話がかなり変わります。外国格付会社あて意見書要旨についてということで。
 昨日、黒田元財務省財務官が日銀総裁になられるということになりました。私も大変いいことだというふうに思っております。もちろん、財務省出身者が日銀総裁になることがそれが果たしていいのかどうかというような議論もございますが、黒田さんの議論を、お話を聞いている限りにおいては、大変望ましい政策を取ってくださるんではないかと私は考えております。
 その黒田財務官、当時の財務官が、二〇〇二年にムーディーズやS&Pといった外国の格付会社が我が国の国債の格付を大幅に下げたということがございまして、それに対して反論の手紙を書いておられます。今も財務省のホームページ上に載っておりまして、外国格付会社あて意見書要旨についてということで、最初に三社に対してお手紙をお送りになると。そして、返事が戻ってきたんでしょう、S&P、そしてムーディーズに対して再反論をしているということがございます。
 これ、私も内容については賛成なんですが、この内容については現在も財務省の見解と食い違いはないというふうに考えてよろしいんでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) 基本的に、民間の格付会社がどうしたってことに対して私の立場で一々コメントするのはちょっと差し控えさせていただきますが、御指摘のこの外国格付会社あての意見書というのは平成十四年に日本の国債が格下げをされたときに行われたものでありまして、その格下げされた理由を客観的に説明してみろといった文章なんですけれども、財務省歴代の中で海外に出された文章としては最も格調高い英語で最もまともなことが書いてあった話で、僕はあれべた褒めしたんですけれども、それが黒田財務官のときだったと思いますが。
 これは、僕はよく、スタンダード・アンド・プアーズじゃなくてプアスタンダーズというのが正しいんだといつも言う。これはちょっと、削除させたりしてちょっと文章訂正しておかないと問題になるのかね。まあいいや。とにかく問題なんですよ、ここは、私に言わせると。スタンダード・アンド・プアーズとかフィッチとかいろいろございますけれども、こういったところに対してボツワナより低い理由を言ってみろということを抗議した文章なんです、あの文書は。大体、自国通貨で国債を発行しているところで、どうしてそんなところで財政破綻なんか起きるんだと、起きるはずがないじゃないかということが簡単に言えば私みたいな言い方で、上品にきちっと書いてある文章だったと、私にはそういう具合にありますんで、決してあの文章を出したからといって日本の財政健全化というものを我々は否定するわけではないんであって、今後とも財政の健全化というものを我々はやっていかねばなりません。
 少なくとも、あのころ国債、国債というか、GDPに対する比率からいきましたら、あのころに比べれば、対GDP比があのころは一四〇%ぐらい、今は二〇〇%近くになろうと思いますんで、そういった意味じゃ今の方がよほどその点だけを見ればきついことになっているということになろうかと思いますけれども、基本的には、我々としては自国通貨でやっているんであって、今、自国通貨でやっている国は日本、アメリカ、イギリス、スイスぐらいですかね、それぐらいのものだと思いますけれども、そういった国で自国通貨建てでやっている国においてはデフォルトなんというのはあり得ぬでしょうがというのが書いてあるあの文章というのは、今でも基本的に正しいと思っております。
○金子洋一君 ありがとうございます。私も全く大臣とその点同感であります。
 じゃ、ちょっとこの文章の内容についてお尋ねをさせていただきたいと思いますが、これは副大臣にお尋ねをさせていただくことになるんでしょうか。では、副大臣にお尋ねをさせていただきます。
 現在も基本的にこの財務省の見解と食い違いがないということを承りました。特に、このスタンダード・アンド・プアーズあて返信大要というところにいろいろ興味深いことが書いてあります。一つは、金利上昇についてですね、あるいは企業の貯蓄についてと申し上げた方がいいのかもしれませんが。これ、副大臣、お手元にお持ちでしょうか、このペーパーは。お持ちじゃない。S&Pあて返信大要というやつ、お持ちじゃないですかね。
 そうですか。お探しになっている間に内容をちょっと読ませていただきますが、その真ん中、2の(1)で、これは大臣がおっしゃったことと重なるんですが、日本国債は現在九五%が国内でかつ低金利で消化されていると。また、二〇〇一年は、一般政府部門の赤字三十二兆円に対し、民間の貯蓄超過は四十二兆円である。さらに、当面、経常収支の黒字は継続し、資本逃避のリスクも大きくない。したがって、資金フロー上の制約はないということ。これが2の(1)です。
 あともう一つ興味深いのが、3の(2)で、マクロバランスとの関係では、貴社は、景気が回復し銀行の新規融資が増加し、金利が上昇すると財政赤字の削減は困難となるとしている。しかしながら、このような状況では、名目、実質双方の成長率が高まり、税収が増え、不良債権処理が促進されることから、むしろ財政再建を進める上では歓迎される。金利上昇の懸念のみを強調して、景気回復に伴うはるかに大きな効果を無視するのは適切ではないというのが3の(2)でございます。
 これについてちょっとお尋ねをしたいわけでありますけれども、まず、よく世間で国債の利率が上がる、国債の価格がつまり下がるというようなことが起きた場合に、いろいろ試算をしまして、あるいは日銀なども試算をいたしますけれども、金利が上昇をするということで金融機関に悪影響がある、あっ、これは副大臣といっても、そうか、金融庁副大臣でいらっしゃる寺田先生ですね。済みません、失礼しました。お持ちじゃないのは当たり前です。失礼しました。
 ちょっと別の問いに入ってしまいますけれども、そういった国債の金利上昇、あるいは金利上昇そのものが銀行への悪影響を与えるという試算がよく出てまいります。これは悪影響を過大評価し過ぎているのではないかと私は思っております。つまり、国債を今現在大規模に取り扱っておられる金融機関というのは、過去もまた大規模に取り扱っておられたものがほとんどであろうと思います、特に我が国の場合は。となりますと、過去に新発国債を購入をしたということは、それによりまして大変大きな利益を上げていただろうというふうに考えられるわけであります。
 そういったことも、過去の蓄積も含めますと、そういったよくある試算というのは大変悪影響を大きく見過ぎているんじゃないかと思うんですが、済みません、これは寺田副大臣にお尋ねをしなきゃならないところを失礼いたしました。
○副大臣(寺田稔君) お答えをいたします。
 確かに、金利下落局面、これによりまして国債価格が上昇して、金融機関も御承知のとおり昨今は一兆円を超える巨額の経常利益を計上しているわけであります。この金利の下落と上昇、それぞれ金融機関の経営に影響を与えるわけでありますが、上昇局面になりますと、委員御指摘のとおり、国債価格が下落をいたします。これだけを見れば、その局面においては損失要因になりますが、貸出金利も同様に上がるわけであります。これは、いわゆる預貸スプレッドが広がることによるいわゆる本業の利ざや、これが増える要因となってまいります。したがって、金利上昇したから直ちにその利益が吹っ飛ぶという構造にはなっていないことは委員御承知のとおりであります。
 この国債保有という側面だけ見ますと、長期的なこの金利の下落の期間、ターム、あと金利上昇の期間、この期間がどっちが長いか短いかによってかなりの程度に影響を受けるわけでありまして、通常、金利下落局面というのは長期的にだらだらだらだらと続くわけです。金利上昇局面というのは割と瞬時にやってまいります。
 例えば、大きなショックであるとか、いわゆる金融危機のときは瞬時に上がると。瞬時に上がると、確かに瞬時にその含み損が発生をするわけでありますが、これも直ちに実現をするわけではないということでありますので、むしろ長い目で見ると、国債の大量保有は、同じ幅上がったり下がったりしたとしても、金利下落局面の期間の方が長いがために金融機関の経営にとってはプラスであるというふうな側面もあろうかと思います。
○金子洋一君 ありがとうございました。
 金利の動きだけを見ますと、まさにそのとおりで、何も異論を唱えるつもりはございませんけれども、ほかに、例えば都市銀行で、最近、都市銀行と言うんでしょうか、都市銀行で見ますと、国債の保有比率というのは多分大体四分の一ぐらいだと思います。それ以外は、突き詰めて言うと、土地や株式といった資産になってくるんだろうと思います、貸出しも含めてですね。となりますと、金利上昇局面で土地や株も、これは同時に上がってくるんではないかと思うんですが、この点に対していかが副大臣お考えでしょうか。
○副大臣(寺田稔君) これはまあ、どちらが鶏でどちらが卵かという部分がございます。確かに、金利というのは実物資産の収益の利回りと裁定関係が働きます。したがって、金利が上がるということは、まさに実物資産の収益率が高まっているからこそ金利が上がる。また、おっしゃるとおり、実物資産の利回りと株価利回りもこの裁定関係が働きますから株価も上がっているというのが大宗であります。
 したがって、いわゆるリーマン・ショックとかショック性の金利上昇でない、通常の景気の上昇に伴う金利の上昇、こうした局面においては、おっしゃるとおり、株価も上がり、また企業の収益も上がっているのが通常の姿でありますので、当然それが金融機関の経営にプラスの影響をもたらすことになると思っております。
○金子洋一君 ありがとうございます。
 さらに、その点、特に土地や株の方についてですけれども、景気が回復をしていく過程ですと、まさにショック性ではないわけですから、銀行のバランスシートにはいい影響を与えるというのが通例だというふうに考えてよろしいでしょうか。
○副大臣(寺田稔君) その点について申し上げれば、おっしゃるとおりであります。もちろん、金利上昇による国債価格の下落あるいは債券価格の下落という面は、これはもちろんさっきも申し上げたとおりマイナス要因ですが、その実物経済の向上あるいは株価の上昇は明らかにプラス要因であります。
○金子洋一君 ありがとうございます。
 世間には、国債が破綻をするとか、そういうようなことをよくおっしゃる方がいらっしゃいますので、全く私はそんなことはあり得ないと思っておりますので専門家にお尋ねをしたかったわけでありますけれども、思ったとおりのお答えをいただけましたので、大変安堵をいたしました。
 続きまして、これはどちらの副大臣にお尋ねすることになるのか。今後の国債の利率の動向なんですが、二%のインフレ目標が導入をされたということでありますけれども、そうなりますと、いずれ金利は上がるんだろうと思います。ただ、それは、よくリアルビジネスサイクルの学者さんなんというのは、すぐに金利が上がると、フィッシャー効果が一瞬にして効いてすぐに金利が上がっちゃうんだみたいなことをおっしゃいますが、そんなことは私はとても信じられませんし、そういった実例はないんだろうと思います。
 そこで、こういったデフレ脱却期と申しますか、あるいは世界恐慌期を含めてでも結構ですけれども、そういった景気が回復をしていくとか、デフレ脱却をしていく過程で金利が急上昇をするという事例はあるのかと、あるいは現在の量的緩和政策を取っている英国ですとか米国ですとか、あるいは北欧も含めていいと思いますけれども、そういった諸国で金利の動向というのはどういうふうになっているのかということをお尋ねをしたいと思いますが、どなたかお願いをいたします。
○国務大臣(麻生太郎君) 先ほど一番最初に申し上げましたように、デフレーションというのは、これは一九四五年、さきの戦争に負けてこの方、デフレーションをやった国がありませんので、過去に例があるかというと、これはもう一九三〇年代の、いわゆるウォールストリートの株の大暴落に伴ったあの一九二九年九月以降のあのデフレーションしか例がないんですが、そのときに今言われたような例がなかった、急激に金利がいわゆる上昇したことはなかったというのは、歴史的にはそうなっております。
 また、これは、国債の金利というのはそれだけで決まらず、いろいろな要因で上がったり下がったり、いろいろな部分がするのはあれですので、物価上昇率との関係のみでこれで決まるというのは、そうはなかなか言えないところなんだと思っておりますが、金融緩和のために日本銀行が国債を大量に買い入れれば、これは需給が逼迫するわけですから、当然のことで国債金利の低下の条件になるという、これははっきりしていると思います。一方で、インフレ期待の方が上昇したりすると、財政に対しまして、日銀の財政ファイナンスに対する疑念というのがあって、リスクのプレミアムが上がってきますので、そうなると国債金利の上昇になるということも確かだろうと思いますが。
 いずれにしても、国債金利が上昇するということは、これは財政、さらには経済、国民生活等々、各般にわたって重大な影響が及びますので、これは日本銀行としては、金利全般が経済に与える影響というものに、これは十分日本銀行として配慮をしてもらわないかぬ、その上で金融政策をしていただかないかぬということになろうと思いますけれども、政府といたしましても、これは持続可能な財政構造というのをきちんと確立しておかないと、これは国債に対する不信ということになりますので、そういった意味で、我々としては、財政構造を我々きちんとやっていきますという姿勢というものはきちんと示しておかねばならぬ、そういったことを着実に取り組んでいかないといろんな意味で影響が出てくると、我々はそう思っております。
○金子洋一君 ありがとうございます。
 もちろん、大量に国債を発行せよというようなことを申し上げているわけではございません。現在の諸外国ではどういうふうになっているというふうにお考えでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) 諸外国の金利……
○金子洋一君 そうです。国債金利の動向が、まさに物価が例えばインフレ目標を導入して二%ぐらいになっている一方で、国債の金利がどうなっているのかと。アメリカですとか、イギリスですとか、北欧ですとか、そういったところでどうなっているでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) 基本的には検討せねばならぬところだと思いますけれども、各国いずれも、今、金融は、日本より先にもうどっと金融を緩和をして、リーマン・ブラザーズのあの事件以降大量に金融は緩和しておられますので、その意味におきましては、直接今その関係がというのは見えるところではございませんけれども、これは引き続き、関係がどういうことになっているかというのは検討せねばならぬところだと思っております。
○金子洋一君 実際には、例えばアメリカなりイギリスなりは物価上昇率が二%近いという状況で、国債の金利はそれでも〇・幾つとか、そういった形でマイナスの実質金利になっております。つまり、現時点でそういった国債金利の暴騰というようなものは先進国では起きていないということが、これが現状なんだろうと思いますし、そういう状況が、つまり実質金利がマイナスになる状況が、インフレ目標政策を取っている間、かなりの期間続くんではないかなと私は思っておりますが、もしこの私の見解について何らかのコメントがありましたらお願いします。
○国務大臣(麻生太郎君) 御存じのように、インフレターゲットという言葉自体は、インフレを低く抑えるためにターゲットをつくるというのが通常使われるので、デフレをインフレにするためにインフレターゲットをやったという例は過去七十年間一回もありませんので、我々は今初めてそれをやっておるわけですけれども。
 いずれにしても、インフレターゲットという言葉を、目標という言葉を言っていただいた、日本銀行から、ということになりましたので、その意味では、今言われたように、少なくともイギリスとかアメリカとかいう自国通貨でいわゆる国債を発行している国等々を見れば、今おっしゃいましたように、実質金利というのはこういうふうになっているということは事実だと、私どももそう思っております。
○金子洋一君 ありがとうございます。
 それでは、また黒田財務官のペーパーにちょっと戻らせていただきたいんですけれども、先ほどスタンダード・アンド・プアーズあての返信のところで、2の(1)と3の(2)ということでお話を読み上げさせていただきました。特に3の(2)についてなんですけれども、ここに書いてある「景気が回復し」、これはS&Pが言っているんですが、景気が回復し銀行の新規融資が増加し、金利が上昇すると財政赤字の削減は困難となるとしているということで、これに対して当時の黒田財務官は反論をしているわけです。そうではないと言っているわけです。
 現時点でも財務省は、こういったS&Pが言っているステートメントに対して、これは間違っているよというふうにお考えでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) この問題に対しては、このときの情勢というものは、先ほど申し上げましたように、日本の置かれています状況というのは、対GDP比に対する国債の比率が一四〇%が二〇〇%まで悪化しているという点は事実としてございますけれども、基本的に書いてあることに関して今と違っていることはございません。
○金子洋一君 ありがとうございます。
 また、2の(1)についても、つまり、これもほぼ確認のような形になりますけれども、国内の消化が九五%、そして、一般政府部門の赤字三十二兆円に対して民間の貯蓄超過が四十二兆円だと。これは大臣もよく御存じのことだと思いますが、したがって資金フロー上の制約はないという記述。
 経常収支については、この一年、二年はちょっと悪化の傾向にございますが、この悪化の原因の大きなところは、LNGですとかそういった発電用の原料の輸入額が増えているというところであろうと思いますし、またこの点については、自民党さん、公明党さんの政権で手を打たれるということを承知しておりますので、この経常収支の問題も黒字に恐らくなってくるだろうということを考えますと、この2の(1)についても、この書き方というのは正しいというふうにお考えになられると思いますが、いかがでしょう。
○国務大臣(麻生太郎君) 基本的に我々としては全くこのとおりなんだと思っておりますけれども、この二年間ぐらいの間、簡単に言えば、多分、石油代金、ガス代金というものが、原発の電力に代わるものとして急遽古い火力発電所を稼働させてみたり、急にスポット買いをしたために石油またガスの値段が急激に上昇、それに伴って貿易収支が大赤字ということになったのが一番大きな理由で、経常収支にまで響いてきたんだと、私どもは基本的にそう思っておりますが。
 これは、私どもにとりましては、少なくともリーマン・ブラザーズのとき、発生したあのときには日本は経常収支も貿易収支も黒字ですから、あのときはそういった状況にもありましたので、我々は、当時、為替換算は百八円ぐらいだったと記憶していますけれども、それがどんどんどんどん円が高くなってドルが安くなって、七十五円ぐらいまでドルが下がったあのときも我々は耐えた。なぜなら、経常収支も貿易収支も大黒字だったから。今は両方とも赤やと。したがって、日本が七十五円が九十円になろうと九十五円になろうと、ほかの国からぶつぶつ文句を言われる必要はないと、我々は赤なんだから、今。今はあの当時とは全く時代が違うということで、今は事この問題に関しては起きていない、その種のクレームは起きていないと存じますけれども。
 いずれにしても、基本的にこれが一番大きくて、日本は対外純資産世界一等々、いろいろなものは私どもの持っている大きな強みだろうと思っておりますので、そういった国の債権に関するものを見ないで、こういったところの評価の仕方はおかしいのではないかという当時の黒田財務官の反論というのは、今日でも基本の反論のベースは同じだと思って、私どもは正しいと思っております。
○金子洋一君 ありがとうございます。
 大変、大臣の極めて御経験に裏付けられた識見のあるところをお聞かせいただけたと思います。これからは、大臣の経済に関するお考えをちょっと直接お尋ねをさせていただきたいと思います。
 三月十五日のあの衆議院の財金委員会で大臣が様々な方に答弁をなさっておられまして、その中で、二〇〇一年から二〇〇六年までの我が国の量的緩和が無効だったという御発言を複数回なさっていらっしゃいます。我が国の量的緩和は長期国債を市場から買い取るという方法で実現をされていたわけでありますけれども、この量的緩和が無効だったとおっしゃることについて、私はかなり、そうではない、有効だったと思っておりますが、改めて大臣に、どうして無効だったとお考えなのかということについてお尋ねをしたいと思います。
○国務大臣(麻生太郎君) これは二〇〇一年から二〇〇六年までの話をしたが、これはちょうど小泉内閣のときだったと思いますけれども、あの当時何をしておりましたかね、政調会長やら何やらさせていただいたんだと、総務大臣、そういうのをさせていただいた時期だと思いますが、この日本におけます長期、もうかなり長期にわたるデフレーションというものは、これはバブルが崩壊、バブルが崩壊というのは人によって定義が違いますので、多分一九八九年十二月の二十九日、東京証券取引所の終値が三万八千九百十五円かな、それが多分株価の最高値を付けたんですが、その翌年から、九〇年からどおんと株は下がっておりますが、土地はまだ九〇年、九一年と上がっておりました。それが下がり始めたのは、九二年から下がり始めたんだと記憶をいたしますけれども、これによりまして一挙に、企業にとりましては動産も不動産も、企業の持っております資産というものがどおんと低下をすることになりましたので、バランスシートでいきますと、簡単にいけば債務超過みたいな形になりますので、そういったものが長期化していきますと、需要の不足というものが出たために、二〇〇一年から二〇〇六年までの間、デフレーションというものから脱却するには需要を創出するということが必要だったんだと、私はそう思っております。
 したがいまして、量的緩和というものを、たしかあのときは大分長い期間あって、二十兆、二十五兆、三十兆、一番多いときで三十五兆ぐらいまで日本銀行は金融を緩和したんだと記憶しますけれども、私もそういったことを申し上げて、その後もデフレ状態というのは変わらずずっと続いておりますので、日本経済には今度はデフレになるんだという予想が定着して、早い話がデフレ状況から脱却するためには、もう来年も下がる、再来年も下がると思い、物は特に買わないということになりまして、こういったデフレーションの予想が固定化されちゃったことを払拭するということが、これは絶対なんだと私どもはそう思っております。
 したがいまして、今回三本の矢というのを申し上げさせていただいたのも、このデフレ予想を払拭させるためには、これは、金融政策の緩和というのは極めて大きな一番目の矢なんですけれども、二番目に財政も機動的にと、そして経済成長もという、この三つ一緒にやらねばならなかったんだと思いますが、あのときの二〇〇一年―二〇〇六年は、その第一のところだけがなくて、御存じのように、日本銀行が幾らお金を緩めましても、市中銀行に、まあ日銀に当座預金がたまりますけれども、それから先、お金が市中銀行から市中の企業に、若しくは個人にお金が出ていくことになりませんと、実需とかそういった実体経済が大きくなっていかないということになりますんで、その意味では、私どもから見ますと、あれは残り二つが足りないというのかな、今でいえば二つ足りない。金融緩和だけでは駄目で、財政も一緒にやらない限りは絶対駄目ですということを申し上げたのがその背景であります。
○金子洋一君 ありがとうございます。
 需要を創出することが必要だと、大切だということをおっしゃったんではないかなと受け止めさせていただきましたが、例えばバランスシートが、企業のバランスシートが傷んだということをおっしゃいました。企業のバランスシートに、じゃ、金融緩和はどういうふうに影響を与えるとお考えでしょうか。つまり、言い方を変えると、金融緩和は資産価格にどういう影響を与えるとお考えでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) 基本的には、中央銀行によります金融の緩和というのが起きますと、これは簡単にはインフレになるかもしらぬという期待インフレ、物価上昇率というのが上がってきますんで、ある程度持続的な、経済成長とうまく整合的な形でいきますと、少なくとも株価とか地価とか、そういった資産価格の上昇につながっていくということが基本的にはそういうことなんだと思っております。
 ただ、他方、金融緩和の副作用というのは必ず起きますんで、必要以上に余った金というのはどこに行くかというと、通常は株と土地に回る。他国でも同じようなことが起きるんで、この資産バブルというのが急激に発生する可能性というのがありますんで、そこのところは常に副作用として起きるということを覚悟して常にバランスをよく見とかないかぬ。バランスというのはバランスシートじゃなくて、それをコントロールする側の日本銀行にしても政府にしても、これが崩壊したときにはどんなことになったかというのは、もう過去我々何回となく経験しておるところなんで、そういったところを考えて、留意をしながらこういったところをやっていかないかぬと思いますんで、金融面での不均衡な蓄積というのをこれは考えないかぬところなので、そういった意味では、リスク要因というのは常に片っ方にありますよということを思いながらやっていかないかぬところなんだと、私どもとしてはそう思っております。
 いずれにしても、実需というものが上回るようなことになりませんと、金が回るようなことになりませんと、そういった意味では、金融の面だけで緩むと、その分は偏った、経済面で一点だけにとか偏った、土地とか株とか不動産とか、そういった偏ったところに金が行く、偏るということを我々としては注意深く見ておかねばならぬところだと考えております。
○金子洋一君 ありがとうございます。
 ただ、先日の財金委員会でも財務大臣はバランスシート不況がデフレの原因だったというふうに、これはどなたでしょうね、小池委員に対して御答弁なさっています。金融緩和をすると土地や株の価格が上がる、仮にバブルであっても上がるということであれば、これはバランスシートは良くなるわけですよね。そうしますと、バランスシート不況がデフレの原因であれば、金融緩和をすればそういった資産を通じた経路によってデフレから脱却ができるということになるんじゃないでしょうか。
 特に、土地や株といった資産を通じてデフレからの脱却ができるというのは、私だけが言っているわけじゃ全くありませんで、内閣参与の浜田先生や本田先生もこれは全く同じことをおっしゃっているんですが、大臣の御所見、いかがでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) 間違いなく今言ったようなことになるということは、またはじける可能性もあるということも同時に意味しますので、余り同じことを繰り返すのは愚かなことになりかねませんので。
 やっぱり、企業のバランスシートの調整が長く続いたことはもう確かだと思います。少なくとも、企業が一斉に債務超過の状況になって金を一斉に返済し始めた。経済用語で言えば、利益の最大化をやめて債務の最小化を図ったと多分言うんだと思いますが。
 そういうことをやった結果、企業はせっせこ返済金、企業の利益は全て、設備投資に回ったやつ、配当に回ったやつ、まずは返済金というのをやっていったために、銀行は大量の返済に、返済攻勢という表現が正しいのかどうか知りませんが、返済を浴びたために金を貸す相手がいなくなったという形になって、返す人ばっかりになってきますと金融は金が回っていかなくなりますんで、それが多分九七年辺りが一番ひどかったときで、アジアの金融危機とも重なって、このときは北海道拓殖銀行が倒産し、長銀が潰れ、三洋証券等々、大きな、大手な金融関係がばたばたいかれたのはその傾向。
 ただし、それの後もずっと続いていきまして、バランスシート不況というような意味で債務の超過を消したのは、多分二〇〇五年ぐらいまで大体大手はそういった状況が続いていったんだと思いますけれども。
 いずれにしても、そういうような状況が続いて、さあ今からやってくれるというときにリーマンがまた来ましたんで、またぞろ収縮して、結果として、企業は今度はもうけた金を、返済するところはもう基本的には無借金みたいな形になっている企業が東証上場企業の四三%といいますから、ため込んだ内部留保が二百何十兆ということになってきますと、それを配当に回すか、設備投資に回すか、労働分配してもらうか、給与に回してもらうかと、そういったようなことになっていくべきところが、そのままじっとした状況というのがこの数年間続いているというところが私どもから見て一番問題なんであって。今言われましたように、金融さえ緩めたらまたどうなるかといえば、別に資金に困っていませんから、無借金みたいな状況で続いておりますので、そういった意味で、企業が金を借りて設備投資に回してくれればいいですけれども、少なくともそれをしないで資金が幾ら緩んでも、基本的には過去と同じように日銀当座預金というものが各市中銀行にだけたまるという状況は避けねばなりませんし、またそれが、特定な土地とか株とかREITとかいろいろございますけれども、そういったようなものに回るということは我々としては避けておかないといつか来た道になりかねぬという点は危惧はいたしております。
○金子洋一君 今、二〇〇五年にバランスシートが傷むのが終わったというふうにおっしゃいましたが、それはまさに量的緩和の最中ではないでしょうか。ということになりますと、やはり量的緩和というのはバランスシートを良くすることには効いたし、そういった面で貢献をしたということにもなるんじゃないかと思います。
 あともう一点、これよく量的緩和の効果というときに忘れ去られているんですけれども、先ほども申しましたが、長期国債を市中から日銀が買うことによって量的緩和を行ったわけです。それは何を意味するのかといいますと、日銀の手元に国債がたまる。となりますと、国が利払いをした場合に日銀に行くわけですね、その持っている分は。日銀に入った余剰金の九五%は国に返っていくわけです。
 例えば、今ベースマネーが百三十兆円ぐらいあります。これを五〇%ぐらい、何ていうんでしょうね、量的緩和でベースマネーを増やすと。そのほとんどが長期国債だったということになりますと、五十兆円分日銀にお金が、国債が回っていくと。その五十兆円に対する利払いというのは、九五%が回り回って政府に戻ってくるわけです。ということは、五十兆円分、世の中から国債の発行残高が消えてなくなるということになるわけです。
 となりますと、こういうことも言えるわけじゃありませんか。量的緩和をしたことによって、少なくともその期間は国の財政が大変助かったということが出てきます。実際に、アメリカ、今量的緩和の真っ最中ですけれども、昨年は約九百億ドル、今のレートで申しますと、ですから九兆円、そういった形でFRBから剰余金が入ってきたということがあります。
 そういった大変大きな効果も量的緩和にはありますし、また大臣、大変バブルを気になさっていますが、バブルが生ずる可能性というのも、それは全く否定できないわけじゃありません。ただ、いつ起こるかどうか分からないのがこれまさにバブルだとも言えるわけで、いつ起こるか分からないバブルを余りに恐れるよりは、そういったことを除けば弊害がほとんどないであろう量的緩和を取ることが我が国の経済政策として今後望ましいんではないかなと私は思いますが、大臣、いかがお考えでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) バブルは、もう最初に、経済史でいけば、多分オランダのチューリップ・バブルに始まり、イギリスの南海泡沫が十七世紀ぐらいから、ずっとこの種のバブルというのは、何回もあってははじけ、あってははじけして、常にバブルは起き、常にはじけるというのも歴史的事実なんですが、そういった意味で、我々としては、それに伴って起きます弊害のところも、ある程度なるべく自然に行くという方向を常に考えながらやっていかないかぬところだと思っております。
 したがいまして、今おっしゃいますように、量的緩和をして、確かに一九九五年、六年ぐらいから、日本銀行、政府が大量の国債を発行して、市中に余った余剰、過剰貯蓄、そういったものを政府が、年間二十兆、三十兆と買い上げてくれたから、日本の政府のあれは、何というの、発行する債券、国債は増えましたし、しかし、逆に言えば、おかげさまでGDP五百兆はこれだけデフレーションにもかかわらずほぼ維持し、ドルでいけば約五兆ドルを大体維持し、そして同時に、御存じのように、その分だけ、大量の国債が出た分だけ政府の借金だけはえらい増えました。
 それが事実でありますので、結果的に一四〇%が二〇〇%に膨れ上がっていったという背景でありますので、少なくとも日本が最大のそういった意味では債務を負っており、政府が負っているというのは事実ですので、こういった状況もある程度考えておかないけませんので、少なくともGDPが増えていくことによって、この債務の比率は今の二〇〇%が一五〇になり、下がっていくということも同時に頭に入れてやっておかねばならぬところだと思っております。
○金子洋一君 あと、更に追加的にお尋ねをしたいんですが、銀行にお金が幾らあっても貸出しに回っていかない、なぜなら企業に資金需要がないからだとおっしゃいました。
 仮にそれを正しいとして議論を進めますと、企業に資金需要がないということを前提にしますと、例えば政府が財政支出をする、その財政支出の資金は国債を発行するということになります。十兆円国債を発行して十兆円の財政支出をすると。十兆円の財政支出をして、民間企業が十兆円分の受注をしたとします。あるいは、家計に十兆円分のうちの幾ばくかの労賃が回ったとします。
 ただ、おっしゃるように、それから先回らないということを前提とした場合には、これは十兆円の公共事業を出しても十兆円の需要しか増えない。その十兆円というのはどこから調達したかというと、市中から十兆円調達をしたんだということになりますと、乗数効果が一切働かないわけですね。乗数効果が一切働かない公共事業というのは、これは全く意味がないんじゃないでしょうか。少なくとも景気浮揚の効果は全くないんじゃないでしょうか。いかがお考えでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) 基本的には一対一ということになりますとおっしゃるとおりです。そういうことになることは確かだと思いますが、しかし、仮にですよ、仮に、乗数効果の計算の仕方は難しいと思いますけれども、アメリカが同じような状況に陥った一九三〇年代後半ということになるんですが、このときにアメリカが造ったものは、例えばサンフランシスコのゴールデンゲートブリッジもこのときできましたし、それからニューヨークのあそこのハドソン川に架かった橋もできましたし、それから、何でしょう、アメリカの大きないわゆる公共工事、あのフーバー・ダムと言われる、今ラスベガスを支えておりますあのダムも、巨大な無駄な公共工事と言われたあのフーバー・ダムが今のラスベガスを支えております。
 一切の公共工事というのはかなり大掛かりな無駄なものだったと思われたものが、結果としてはすさまじい大きな効果を生むことになっていったと思いますので、公共工事はその時点で見れば乗数効果ゼロという可能性はあるのかもしれませんけれども、長い目であるという点が一点あろうとは思います。
 しかし同時に、やっぱりそういった、もうGDPは御存じのように、個人消費、企業の民間投資、そして政府支出、この三つ、ほかにも純輸出とかいろいろありますけれども、基本的に大きなもの、GDPはこの三つででき上がっておりますけれども、その三つのうちの上二つがまず、上二つ、下二つが、個人消費と民間設備投資が全く動かないという状態になりますと、これはもう政府支出で動かしていく以外に方法がないんだと、私はそう思っておりますので、財政再建よりは機動的な財政運営だということを申し上げて約三か月間来たんですけれども、少なくともそれを動かない限りは、下の二つが、ああ、政府は方向を変えたんだという方向を見ると、企業は、じゃこれで道路が出る、仕事が出るとなれば、そこでブルドーザーを買ってみたり、ロングブームを買ってみたり、サイドダンプローダー買ったり、いろんなものをみんなするんだと思いますけれども、そういうようなものが出ていくと初めて民間の設備投資がそこに湧いてきて、そしてそれが結果的に給与に回ってというような形に回って消費に回る。
 したがって、いわゆる三本目の矢というのは最も大切なことになるんだと思いますので、最初に動かさねばならぬところが政府によります財政出動、それを裏付けられておりますのは金融の緩和等々というものが非常に大きな要素に占めることは間違いないと、私もそう思います。
○金子洋一君 ありがとうございます。
 大臣のおっしゃっていることは、いわゆる呼び水効果であろうと思っておりますが、ただ、まさにデフレの環境で呼び水効果が働くとは、これはちょっと考えられないんじゃないでしょうかということが一点です。
 あと、そのTVAの例などを出されたと思いますが、世界大恐慌からの脱出について、アメリカの場合、公共事業の役割を大きく見るという視点は、これはもう随分前に否定をされておりまして、今のFRBの議長のバーナンキさんなんというのが大恐慌の研究の第一人者ですが、あれはもう基本的に金融政策を緩めたから脱出することができたんだということが定説になっております。
 それを踏まえますと、公共事業のことをおっしゃいましたが、例えば教育に、これ公共事業の代わりにお金を投入したらいかがでしょうか。と申しますのも、第三本目の矢、経済成長ですけれども、経済成長、成長戦略何とかというのはこれまでの政権で何回も何回もつくられてきております。私ども民主党の政権でもそうでした。ただ、これはありていに申しますと、どれもが予想どおりに働いたわけじゃありません。そういった産業政策が必ずしも効かないというのが最近の経済状況じゃないかと思います。
 となると、経済を成長させるためには何が必要かということになると、資本を蓄積することと、あと労働力を増やすということですね。特に労働力を増やすということになりますと、優秀な労働力が多ければ多いほど経済の潜在成長率というのは伸びます。ところが、今、日本は公的教育に対する支出が、OECDのデータでほぼ一番下とか下から二番目です。そういったところにお金を回すことによって、より経済成長を強化することができるんではないか。さらに、企業ですと、お金は余り使わないかもしれません。しかし、お子さんの教育ということになれば、最近の家計は幾らでもこれお金使います。これ、我が家でももういろんな教育をさせていただいている。子供は迷惑かもしれませんけれども、とにかく勉強してくれよということでやっています。
 そういうようなことで考えますと、公共事業よりもそういった教育にお金を回した方が私はいいと思いますが、これについて、大臣、いかがお考えになるか、これお尋ねをしまして、そろそろ時間になりますのでこれを最後の質問とさせていただきます。
○国務大臣(麻生太郎君) 間違いなく、今回の我々の例えば公共事業、例えば例のいろいろ御意見のありました補正予算におきましても、公共事業以外のものとして、私どもは、手っ取り早く出ていくものとしては、補修とか改修とか、いわゆる落盤事故なんかありましたので、そういった意味に対しての補修事業、これはもう土地代にお金が行きませんから、間違いなくすぐ仕事が出てくる、地方にお金が回るということで、これ主にやらせていただきましたけど、同時に人材育成等々で約二千八百億円ぐらいのものをそういったところに回したりもいたしております。
 また、本予算の中においても、贈与の形として、少なくとも教育関係に関しては、一世代飛んで親が孫の教育にというのであればその分だけは無税にしますとかいろんな形で、従来ですと、そこに相続税が掛かるような話のところを飛んだりさせていただいておりますので、教育というものに関しまして、特に安倍内閣の場合は御自身が教育に非常に熱心であることもこれあり、そういったところに関していろいろ配慮をしておられる。
 私どもも、それを受けまして、予算編成に当たりましてはそういうところを十分に考えておりますので、教育というところにきちんとしたものをやっていくべきという方向に関しましては私どもも同様に考えております。
○委員長(藤田幸久君) 金子洋一君、時間でございますので、おまとめください。
○金子洋一君 はい。
 今日は長時間ありがとうございました。いろいろ質問が残っておりますが、それはまた別の機会にお尋ねをさせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。


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