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国会質疑
国会質疑 詳細
2013年5月30日
財政金融委員会

○金子洋一君 おはようございます。民主党の金子洋一でございます。
 今日は、大臣、副大臣、そして黒田総裁、そして皆様方、朝早くからお越しをいただきまして、ありがとうございます。
 まず、金融政策に入らせていただく前に、一つ所得税法関係の御質問をさせていただきたいと思います。
 所得税法と申しますと堅苦しいんですが、実は先日、五月の二十三日に大阪地裁の方で、馬券ですね、競馬、勝馬投票券を購入し、多額の利益を得たのにもか かわらず確定申告をしなかったということで、所得税法違反、無申告罪に問われた元会社員の方、三十九歳だということですけれども、その方に対する地裁の判 決が出たということであります。この方は、二〇〇五年から馬券購入を始め、そして当たり馬券の払戻金を次のレースに投入をするという方式で、五年間にこれ は延べですけれども約三十五億円分購入をして、そのうち、そしてそこから一億五千五百万円の利益を得たと。ただ、確定申告をしていなかったので、税務当局 が調査をして、これは利益の四倍以上に当たる所得税を課したという件でございます。
 この件につきましては、現在係争中の案件でもございますし、この場で議論をするというのにはふさわしくないと思いますので、国税庁の方といろいろと議論をさせていただきました。
 競馬と申しますのは、これは昭和の二十三年ですけれども、畜産の振興に寄与することを目的にということで始められたということでありまして、この場合、 公営競技は競馬だけではありません、競輪ですとかオートレースですとか競艇ですとかありまして、それぞれの競技にはそれぞれの公益的目的があるということ になっております。
 公営競技のファンからはいろんな声が出ておりまして、要するに、通常二五%控除をされると、いわゆるテラ銭と口語的に言うと申しますんでしょうか、それ があると。つまり、七五%しか戻ってこないと。元々二五%引かれているのに、その配当にも申告や納税の義務があるのかと。そして、それだとちょっとやって られないよなというような御意見が非常に多くなっておりますし、私も大変共感をするところでございます。
 これ、よく考えてみますと、ファンが勝馬投票券を買いませんと競技として成り立ちませんし、その公益的目的に回るお金というのもおのずと減ってしまうわ けであります。そこで、どうやって納得をしていただくのかというところが非常に大きな問題になってまいりますけれども、ほかの、例えば宝くじを見てまいり ますと、当せん金付証票法ということで宝くじを発行されておるんですけれども、「所得税を課さない。」と明記をしてあります。サッカーくじも同様です。と いうことで、何で公営競技だけがという声が大変強くなっているわけです。国税庁のホームページを見ましても、一時所得として懸賞、当せん金や競馬や競輪の 払戻金を申告せよと書いてあります。オートレースや競艇は書いていないんですが、同じことだと思います。
 そういうことを見てまいりますと、非常に、ああ我々は何か脱法行為やっているのかという大変不安の声が強く出ておりまして、ただ、いろいろ議論をさせて いただきましたところ、そういうことが本当に必要になってくるのかと。趣味的に買う範囲内で本当に、一般論として、今の判決とは別ですね、趣味的に買う範 囲内でそういった申告をしていないとこれはいけないことなのかどうかということ。つまり、こうした競馬に、あるいは公営競技について配当が来ると、その配 当についてどういうふうに取り扱えばいいのかという課税関係について、どうか、そういった公営競技ファンが安心をするような御答弁をいただきたいと存じま すが、できれば大臣、お願いをしたいと存じます。

○国務大臣(麻生太郎君) サッカーくじをつくるときにこの問題は一番問題になったと記憶をいたします。たしか宝くじとサッカーくじ、この二つだけは、今 言われましたように、課税の対象になっていないという御説は正しいです。ただし、その代わり払戻金は五割ですから。競輪、競馬は七五%、サッカーくじとあ れは五割なんですよ。これはもう、最初つくるときにこれが一番もめて、文部省でこれを所管するのに脱税をやるなんということになると話が込み入るではない かというんで、配当金は五割でいい、その代わり税金は払わないという方法をあのときは選ばさせていただきました。
 したがいまして、今のおっしゃることは決して分からぬわけではないし、気持ちとしても分からぬわけでもないし、俺もそれだけ万馬券当てたいなと思わない 気持ちもないわけじゃないんですが、取ったら大体あれ身銭として使わずにみんなぱあっと使ってくれますので消費税は上がりますし、悪くないなと私自身は率 直にそう思わないわけではありませんが、元々のあれは配当の額が七五と五〇の違いでスタートしておりますので、ちょっとサッカーくじと宝くじ、それと競 輪、競馬とは元々が違っておるという背景があるという点だけは御理解をいただいておきたいと存じます。

○政府参考人(西村善嗣君) お答え申し上げます。
 一般論として申し上げれば、競馬の馬券の払戻金から得た所得につきましては、所得税法上、一時所得となります。一時所得の金額は、一時所得の総収入金額 からその収入を得るために支出した金額で直接要したものを控除し、さらにその残額から五十万円の特別控除額を控除した金額であり、その二分の一の金額が課 税の対象となるものでございます。
 私ども国税当局といたしましては、個々の事実関係に基づきまして、法令等に照らして適切に取り扱うこととしております。

○金子洋一君 ありがとうございました。
 大臣、決してサッカーくじの悪口を申し上げておるわけではございません。私もサッカーは好きです。やる方は絶対無理なんですけれども、見る方は大変好き でございます。今の次長の御説明で、趣味的にやる範囲内では大丈夫なのかなというふうに思わせていただきました。私も公営競技ファンの一人として大変安心 をしたところでございます。
 続きまして、金融政策に入らせていただきます。
 アベノミクスの大変主要な柱、第一の矢として大胆な金融政策がございます。これは、一言で申しますと、私は明らかに成功していると言わざるを得ないと思 います。もちろん円安、株高、それは影の部分があるということは、これは世の中の事象全てそういうものだろうと思います。
 ですから、原燃料費の高騰ということに対していろいろな手当てをすべきだという議論、私も大変賛成でございますけれども、この場は金融政策でございます ので。また、これまでこの財金委員会でも本会議でも麻生大臣に対して何回かお尋ねをさせていただきましたが、何となく基本的にゼロ回答だったかなという感 じもいたしますが、それはさておきまして、大変大胆な金融政策、特に黒田総裁率いる日銀の下での金融緩和というのは非常に大きな成果を上げているというこ とは、我が国の中でも、あるいは国際的に見てもそういう高い評価が与えられていると私は考えております。
 特に、異次元緩和と呼ばれるこの緩和が異次元であるゆえんは、私に表現をさせていただきますと、いわゆるこれまでの日銀理論というものから懸け離れた存 在であるというふうに考えております。そして、日銀理論と申しますと、金融政策で物価を動かすことはできないと、非常に平たい言い方をするとそういうよう なものであるというふうにこれまで言われてまいりました。そこに私は、それ以外にも、例えば中央銀行の自己資本を過度に大切にすると。過度にです、ある程 度大切にするのは分かります。あともう一点は、景気よりも国債の価格を気にするといったような点があるのではないかと私は思っております。
 そういった見方から、ちょっと日銀の会計についてお尋ねを黒田総裁にさせていただきたいと思います。
 実は、昨日の十六時に二十四年度の日銀の決算報告がございまして、非常に良い数字が出たと思っております。大体日銀には約五・五兆円の外貨資産がありま して、その外貨資産が円安になったということで為替益が出たと。そして、この為替益については六千三十六億円だったということであります。
 黒田総裁にお尋ねしますけれども、この六千三十六億円をまず収益に繰り入れて、そしてさらに、納税した残りについて、その納税した残りの九五%を国庫に納付すると考えてよろしいんでしょうか。

○参考人(武田知久君) そのように考えてよろしいと思います。

○金子洋一君 ありがとうございます。
 特に、外国為替の取引について為替差損が出たときには、過去の例を見ていますと、為替差損が出たときには、その差損分は国庫納付を減らしていて、一方 で、為替益が出た場合には、半分今後の差損が出たときの引当金として日銀内にとどめるということをなさっているんではないかなと思うんですけれども、それ は私の認識違いでしょうか。

○参考人(武田知久君) 日本銀行の決算では、一般の会計原則を尊重しつつ、対外的にも公表しております会計規程などに基づいて作成されております。毎期 の決算の内容につきましては、日本銀行の政策運営とか保有資産の状況、金融経済環境なども踏まえた上で政策委員会で決定し、日本銀行法第五十二条に基づい て財務大臣に承認を受けております。
 ただいま委員御指摘のとおり、外国為替の取引損失引当金につきましては、これまで、ここ数年間取崩しを行わず、このところ、今回は差益が生じた部分については積立てを行っているというのが現状であります。

○金子洋一君 ありがとうございます。
 もちろん法的な手続はきちんと踏んでおられるということでありますけれども、となりますと、為替が上下をすると、円高になると損益の為替差損が出て、そ れは要するに国庫納付分から全額引くと。一方で、円安になると、差益の分については半分を手元に残して国庫に納付をするということだと思います。となりま すと、為替が上下をして、でも平均で横ばいになったということになりますと、これ自動的に日銀の手元にお金がどんどん残っていくということになりはしませ んでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) ただいま委員が御指摘のような決算をこのところしておることは事実でございます。ただ、かつては自己資本比率の数字について、決 められている数字よりもかなり高い自己資本比率がある下ではそういった言わば対称的な取扱いをしていたわけでございますが、このところ自己資本比率が下 がっておりまして、そうした下で今委員が御指摘のような形の取扱いをしております。
 これは、先ほど理事からも御説明申し上げたとおり、対外的にも公表している会計規程にそういった保有資産の状況とかその他を踏まえた上で適切な会計処理をして、そして財務大臣の承認を受けるという形になっておることを踏まえて行っているものでございます。

○金子洋一君 今の総裁の御答弁を解釈をいたしますと、法的な手続はきちんとやっていると。ただし、その都度日銀の会計なり自己資本比率を見てその都度判 断をするというふうにおっしゃっているんだと思いますけれども、これですと非常に不透明で非常に恣意的なものになってしまう可能性があるんじゃないかと思 いますが、そういうような懸念が外部から寄せられるという可能性についていかがお考えでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 先ほど申し上げたとおり、公表されている日銀の会計規程に沿って処理をしておりまして、その会計規程の中で、今言ったような、当 然ですけれども、銀行としてその健全性というものを踏まえつつ会計処理をするわけでございますので、自己資本比率の状況から見ますと、現在それを下回って いるという状況でございますので、そうした下で先ほど委員御指摘のとおりの処理をしてきていると。しかも、これは、当然のことながら財務大臣の承認も得 て、かつ、こういう形でやっておりますということで公表もしております。

○金子洋一君 公表をしておられるのは分かっておりますし、手続的に法的には満たしているということもよく分かりますが、ただ、我が国の経済の状況を踏ま えてみますと、要するに日銀さんの自己資本を増やしていくということを目指してそういうその都度判断をされているんだと思いますけれども、果たしてそれが 我が国の経済にとってどのくらい重要であるのかということが私は大変気になるところなんです。
 と申しますのも、そういった下落、円安になるときには半分しか国庫に納付しないけれども、円高になるときには全額差し引きますということをやっている と、自己資本が増えていくということであります。これが市中銀行でしたら自己資本が増えていけばリスクをがんがん取るようになって貸出しが伸びるというこ とになるんだろうと思いますけれども、果たして中央銀行でそういうことが行われているのかな、特にこの日銀さんの場合どうなのかなという感じがいたしま す。
 と申しますのも、二〇一一年の五月の十二日にこの財金委員会で、今度理事にお戻りになりましたが、雨宮理事に質疑をさせていただきまして、平たく申しま すと、私の方から、自己資本が増えるということになれば、例えば長期国債の買い切りオペを増やしていただく余裕が増えるとか、そういうような金融緩和をよ り大胆にやってくれるということなんですかというふうにお尋ねをしましたら、イエスという答えはとうとう出てこなかったわけなんですね。これは二〇一一年 の議事録を御覧いただくと明確にそうなっております。
 じゃ、国民の経済にとって、我が国の経済にとって大変重要な金融緩和をしないと、その一方で国庫に納付もしませんということになりますと、果たして何の ために自己資本を増やしていて、それは日本の国民のためになっているのかという大変な疑問が出てまいるわけであります。もちろん、自己資本比率が大変に悪 くなった場合には、それは諸外国との比較でああだこうだ言われて、非常に私どもにとって不利益なことが起きるかもしれませんけれども、何でその自己資本を お増やしになるということ。いいんですよ、増やしても。増やしても、じゃ、それでもっと更に大胆な金融緩和をやりますとそこで一言おっしゃっていただきゃ いいんですけれども、そういうことは少なくとも二〇一一年の段階ではおっしゃっていないわけです。
 そこのところ、私はちょっと整合性が取れていないと思うんですが、総裁、いかがお考えでしょう。

○参考人(黒田東彦君) 委員御指摘の点につきまして、まず第一に、日本銀行として今回決定いたしました量的・質的金融緩和というものは、極めて大規模で かつ日本経済をデフレから脱却させるために必要かつ十分なものだというふうに思っておりますので、そういった意味では、委員御指摘の大胆な金融緩和という ことは既に行われているわけでございます。その上で、日本銀行の財務の健全性を確保するということが、やはり今言ったような量的・質的金融緩和の下で思い 切った金融緩和を行っておりまして、この自ら決定した政策を的確に遂行していく上でも、財務の健全性を維持していくということはやはり必要ではないかと。
 それから、更に加えて言いますと、日本銀行が中央銀行としての使命を果たしていく上では、言わば国民からの信認というものも維持していかなければならないわけでして、それにも貢献するのではないかというふうに思っております。
 私も総裁になってまだ二か月程度でございまして、委員のおっしゃることもある意味でよく分かるわけでございまして、各国ごとに、実は自己資本比率あるい は自己資本の在り方については、歴史的な経緯とか制度的な違いを背景にして、国ごとにかなりまちまちでございます。したがって、まだ一律に全ての国に適用 されるようなものがあるわけではありませんが、しかし、その中でもやはり多くの中央銀行が一定の自己資本というものを持って、それを財務の健全性の一番重 要なバックアップにしているというところは比較的共通しているように思いますので、その意味では、やはり財務の健全性ということは重要であるというふうに 思っております。

○金子洋一君 私も、自己資本の、あるいは自己資本比率というものについて重要ではないとは思っておりません。
 ただ、日銀の信用といったときに、その信用のバックになっているものはやはり、一兆円ですか二兆円ですか、その自己資本じゃなくて、日本国の中央銀行で あるということがその全ての信用の源泉になっていると思うんです。そういった意味で、通常の市中銀行とは全く存在、その自己資本を重んずるといったとき に、その重んじ方というのは違う形であるべきだと思います。
 実は、二〇〇三年度の日本金融学会の春の大会で、今のFRBの議長のバーナンキが来日をしまして講演をしておりまして、彼はこう言っております。
 日銀の資本をめぐって議論があるからといって我々は現状の経済状況から目を背けてはなりません。特に、民間株主がいるとはいえ、日本銀行は民間商業銀行 ではありません。民間企業の破産という意味での破産は日本銀行の場合にはあり得ませんし、商業銀行が資本を維持する、例えば、過大なリスクを引き受けると いうインセンティブを減らすためにという普通の理由は日銀については直接には当てはまりませんというふうに講演をしております。
 私はこの考えに賛成をいたしますので、どうでしょうか、これまでのような会計の仕方を見直していただいて、もっと透明な、その場の恣意的な判断ではない というような仕組みづくりに向けて、少なくとも予算の説明の在り方とか国会との関係とか、そういったところを見直していくべきではないかと思いますが、総 裁、いかがでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) もとより、常日ごろから適切な情報公開、そして、特に今御指摘のような論点については十分配意しておりますし、今後とも配意してまいりたいというふうに思っております。

○金子洋一君 これは麻生財務大臣にお尋ねをしたいんですが、為替が十円上振れ、下振れいたしますと、そういった日銀の外貨資産の、五・五兆円ありますか ら、プラスマイナスというのは千億とか二千億とか三千億出ます。非常に大きいわけですね。二千億円の税制改正といったら、これはかなり大ごとになります。 そういうものが日本銀行というシステムの中で決められてしまうと、もちろん財務省には協議はするということですけれども。そういったこの仕組みの在り方、 あるいは自己資本の在り方ということについて検討する必要が、予算作成の面から検討する必要があるんじゃないかと思いますけれども、大臣、お考え、いかが でしょうか。

○国務大臣(麻生太郎君) 自己資本比率を何%、今七・四とか五とかいう話になっていると思いますが、この話を大体八ぐらいをめどにこれまで運用してこら れておられる。で、この十年ぐらいは大体八をずっと割っていると思いますが、そういう形になって、一応八、その八が適正かどうかというのは、各国と比べて みますと、これはいろいろ国によって差があるというのは先ほど総裁のお答えになったとおりだと思っております。
 これを、為替差益が出たときに、その自己資本比率のパーセントを上げるのをやめて、逆にむしろ七でいいやということにして、残りは全部国庫納付金、それ はいただく方は、我々の方としては大変有り難いということにはなりますが、果たしてそれが世界的に見て、世界的に見てそれが、日銀、何でそんなことをする んだということになるのか、ちょっとそこらのところが私どもも、ちょっと中央銀行の立場というのは各国それぞれその国の中における立場がありますので、そ ういった横の連携というのを見ました場合に、それぞれお互いに、そうですね、G7ぐらいのところの中央銀行総裁の横の連絡というのは極めて密に見えます し、そこのところの関係を見てみると、大体同じような考えで事をスタートしてお互いの信用を高め合っておられるように見受けますので、特に日本銀行の場合 は、ヨーロッパのようにオーバーナイトコールは一晩で二%だ、三%だとむちゃくちゃなことになったこともないし、きちんとした信用のあるところでもありま すので、私どもから見ていると、今のように直ちに変えねばならぬというような意識があるわけではございません。

○金子洋一君 ありがとうございます。
 ただ、これ、日本銀行の場合は外為引当金という名前なんですね。となりますと、上がったときと下がったときでやり方が非対称的であると、これはいかにも 不透明、非論理的だという印象をかえって与えかねないんじゃないかと私は思いますが、この件につきましては、またいろいろと勉強をさせていただいて、お尋 ねをさせていただこうと思います。
 続きまして、長期金利の動向と経済情勢につきまして、黒田総裁にお尋ねをしたいと思います。
 最近、長期金利と申しますか金利の動向が上がったり下がったりが激しくなっておりますけれども、景気が回復をすれば基本的に特に長期金利が上がるという のは、これはもう昔から常識でありまして、今の景気動向指数にも長短金利差が先行指数として入っているぐらいであります。
 問題は実質金利になってくるんだろうと思います。その実質金利のことについては後ほどお尋ねをしますけれども、まず、このイールドカーブの形状がどう なっているのかということでありまして、これ、三か月とか六か月とか、そういった比較的短期のものについてはそのままで、そしてそれより長いものについて は上がっているという形で、言わばイールドカーブの景気回復を示すスティープ化が起きているというふうに私はとらえておるんですけれども、総裁はこのイー ルドカーブの動きについてどのようにお考えでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 御指摘のとおり、足下のイールドカーブを見ますと、短期のゾーンは日銀の金融緩和により低位に抑制されている一方、全体としては緩やかな右上がりの形状になっております。
 長期金利は、御指摘のとおり、先行きの経済あるいは物価情勢に関する見通しを反映するものであることはそのとおりでありますが、更にそれに加えて、債券 を保有することに伴う様々なリスクに応じた上乗せ、いわゆるリスクプレミアムが加わった形で形成されているわけでございます。現在、日本銀行が行っており ます巨額の国債買入れにはこのリスクプレミアムを圧縮するという効果がありまして、その意味では強力な金利低下圧力を加えているわけでございまして、この 効果は買入れが更に進んでいくにつれて強まっていくというふうに考えております。

○金子洋一君 ありがとうございます。
 今、リスクプレミアムのお話が出ましたけれども、物価連動債、これが大体残存期間、一番長いもので五年ちょっとぐらいになっておりますけれども、ですか ら、今後、理屈で言うと五年間ぐらいの物価の動きを踏まえたものになっておりまして、これが大体、簡単に言うと、今後五年間の実質金利とそこにリスクプレ ミアムを乗っけたものの合計だろうと思いますが、その数字がマイナスの一・三%ぐらいになっています。となりますと、これ、我が国もそういった五・五年と いうような金利もマイナスになってきていると、実質金利がマイナスになってきているというふうに私は見るんですけれども、総裁、いかがお考えでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 予想物価上昇率を正確に計測することがなかなか難しいわけでございまして、実質金利の水準について確たることを申し上げにくいわ けですが、委員御指摘のとおり、物価連動国債等、あるいはさらには様々のアンケート調査などを見ますと、このところ予想物価上昇率の上昇を示唆する指標が たくさん出てきておりまして、その意味では実質金利が低下しているということは事実だと思いますが、それがマイナスになっているということについては、そ ういった計算もされておりますけれども、先ほど申し上げたように、そもそも予想物価上昇率を正確に計測しにくいためにマイナスになっているというふうに断 定することは難しいと思いますが、実質金利が下がってきているということは事実だと思います。

○金子洋一君 ありがとうございます。
 ただ、物価連動債の利回りがマイナス一・三だということになれば、理屈だけで考えますと、物価連動債というのは実質金利そのものですね。ただ、債券です のでリスクプレミアム分があって、ですから何がしかそれよりも、実際の実質金利よりもマイナス一・三というのは上になっているはずですよね、リスクプレミ アム分が。ですから、リスクプレミアムが大きければ大きいほど、実際はマイナス一・三という数字がマイナス一・五かもしれないしマイナス一・六かもしれな いわけですから、私は総裁のおっしゃっていることというのはちょっと理屈になっていないなと、ちょっと甚だ失礼ながら思っております。
 これは、実質金利がマイナスになっているということになれば、例えば企業なり個人なりが貯金をしているあるいは手元に置いている現金を使うようになると いうことで、歓迎すべき、少なくとも景気回復については歓迎すべきことだと思っておりますので、この大胆な金融緩和政策というのはうまくいっているという 証拠だろうと私は考えております。
 あと、もう一点なんですが、四月四日の異次元緩和の実施に伴うペーパーを見ておりますと、要するにマネタリーベースを目標に変えたんだという書き方をし ておられます。そういう量を目標に変えたということになりますと、これまでは金利を目標にしていたわけですね。そうなりますと、これまでは金利を目標にし ていたんだから余り乱高下は当然しないと、目標数値ですから。しかし、今回、四月四日以降は金利を目標にしなくなりましたので、ある意味で乱高下してしま うということも、激しく動いてしまうということも大いにあり得るということにこれ原理的になると思うんです。
 ところが、総裁の発言を聞いておりますと、いや、金利の乱高下についてはきちんと何らかの対応策を打ってまいりますというふうにおっしゃっていて、それ はもちろん必要だと思うんですが、そもそも論として、マネタリーベースを目標に変えてしまったわけですから、金利が激しく動くというのは、これはもう当然 じゃないかと私は思います。
 それで、例えば債券を売り買いをなさっている方というのは大変な目に遭われるんだと思いますけれども、これは市場というのはそういうものですから、これ は残念ながらそこは甘受をしていただかなければならないと思うんですが、そういったマネタリーベースを目標にしたために金利の上下が原理的には起こってし まうという考え方について、総裁、いかがお考えでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 確かに、従来のオーバーナイト金利を金融調節の目標にしていた形からマネタリーベースに変えたことは事実でございますが、オー バーナイトの金利のところはいずれにせよ新しい金融緩和措置をとる前と後とで全く同じで、基本的にゼロ近いというか付利の金利である〇・一のところにアン カーされておりますので、そういう意味では、金融調節の手段がオーバーナイト金利からマネタリーベースに変わったということは事実でございますが、それ自 体で何か金利が大きく動かなければならないと、あるいは動いても構わないということではなくて、短期金利のところは前と同様にアンカーをされております。
 問題は、金融政策、新しいものを取った後、やや一部に、特に長期国債の一部に価格が乱高下してボラティリティーが高まり、それ自体がリスクプレミアムを 上げてしまうと、せっかくリスクプレミアムを圧縮して実質金利を下げていこうということにプラスになりませんので、そういった意味で、引き続き長期金利に 強力な低下圧力を加えていくというためにも、やはり長期金利が安定的に形成されるということが重要であると。その意味で、金利のボラティリティーを放置す るということではなくて、それをできる限り小さくして、それを通じて更に金融政策の効果がより強力に発揮されるようにしていくことを考えております。

○金子洋一君 済みません、私の残り時間があと多分三分ぐらいになっておると思いますので、最後に、こうした金利のいわゆる乱高下という状況が金融機関に どういった影響をもたらしていると考えられるのか、御所見を金融担当大臣としての麻生大臣と、そして黒田総裁、お二方にお尋ねをさせていただきまして、私 の質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(麻生太郎君) 金利の上昇が金融機関、いわゆる財務に与える影響をどのように金融庁でとらえているかという御質問なんだと思いますが、これは 御存じのように、これは金融機関の財務に具体的にいかなる影響を与えているかということはちょっと立場上なかなか言える立場にありませんので、その点に関 してはコメントを差し控えさせていただきたいと存じます。
 ただし、一般論として申し上げれば、これは、金利の上昇ということが国債価格の下落ということによって金融機関の財務にマイナスを与えるというのは、 持っております国債の金利等々ございますので。したがって、貸出金利の上昇とか金融回復等々に伴う株価の上昇によって、そして財務にプラスの影響を与える という面もこれは逆に期待されるというところであろうと、それぞれ株式を持っておられますので。
 そういった意味で、参考までで申し上げれば、金利が一律に一ポイント仮に上昇をした場合でも、大手行に相応の債券時価損失というものはある程度生じると は思いますけれども、自己資本、先ほど御質問があった自己資本基盤というものが全体として大きく損なわれるというようなことではない、そのくらい自己資本 比率が高いということだろうと思いますが、そういったことが試算としても出てきておると思っております。
 いずれにいたしましても、債券保有というものに伴いますリスク管理というものは、これはもう基本的には金融機関の責任において行っていただかなきゃいか ぬところだと思っておりますが、金融庁としても、足下の銀行のポートフォリオ等々をよく、債券の比重が高まっているという状況も踏まえて、私どもとしては 適切な検査監督は引き続き行っていかねばならぬと考えております。

○委員長(藤田幸久君) 黒田総裁、質疑時間が過ぎておりますが、簡単にお願いいたします。

○参考人(黒田東彦君) はい。
 大臣が述べられたとおりでありまして、金利の上昇が金融機関の保有する債券価格を下落させる一方で、経済情勢の改善を伴うものであれば、利ざやの改善あ るいは貸出しの増加などを通じて金融機関の収益にはプラスの影響を及ぼすということでございまして、金融機関の現状、自己資本の充実度などを見ますと、金 利が相応に上昇しても金融機関の経営や金融システムの安定に大きな影響を及ぼすとは考えておりません。

○金子洋一君 どうもありがとうございました。

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